小川仁志:私の場合30歳で哲学に出逢ったので、それまでは哲学を感じない人生でした。というより哲学などまったく知りませんでした。バブル期に青春を過ごしたおかげで、ユーモラスな経験しかしなかったのです。ところが問題は、永遠に楽しいことばかりが続くわけではない点です。そんな時、哲学が必要になります。でないと悩み続けることになるからです。私の人生がまさにそうでした。バブルが崩壊し、会社も辞め、20代後半、いくつもの苦難に直面してしまいました。そして悩むだけの日々を過ごしました。その時、哲学に出逢ったのです。それからの私の人生は大きく変わりました。苦難が訪れても決して悩むことなく、哲学によって乗り越えることができるようになったからです。哲学がある人生とない人生の違いは、そこなのではないでしょうか。苦難に直面しても、乗り越えることができるかどうかです。人生山あり谷ありです。そんな中でくじけることなく前向きに生きていくためには、哲学が必要だと思うのです。それに、考え抜いて苦難を乗り越えた時は、まるで大洋を渡り切ったような、あるいは高い山を登り切ったような充実感を覚えることができます。だから私は、たとえ苦難ばかりが続くとしても、哲学のある人生を選ぶと思います。