綾崎隼:質問ありがとうございます。 幾つかのシリーズを繰り返し読まないと、千桜瑠伽に注意が向くことはないと思います。深く読み込んで頂けているのだなと嬉しくなりました。 瑠伽は2014年にメディアワークス文庫から発売した本格ミステリ、『赤と灰色のサクリファイス』＆『青と無色のサクリファイス』で初めて登場しました。この時は離島で医師を務めていました。 その後、2019年に講談社タイガから発売した静鈴荘シリーズ、『世界で一番かわいそうな私たち』で再登場しました。この時は闇医者のようなことをしていました。 サクリファイスではトリックを成立させるために必要不可欠な立ち位置で。 静鈴荘シリーズでは＜世界で一番かわいそうな夫婦＞の秘密を唯一知っている居候として。 どちらも登場シーンは少ないですが、重要な役割を演じてくれたように記憶しています。 舞原一族は基本的に仲が良いです。一枚岩というか、吐季と両親の関係は最悪ですが、親族は皆、互いを大切に思っています。 一方、千桜一族は病院内での権力闘争もあり、殺伐としています。 瑠伽は医師免許を持っているものの、根本的に、やる気も使命感もなく、一族を一歩引いた目線から、呆れ顔で見つめている人間でした。医学部に進学したことも、モラトリアムが一番長かったからに過ぎません。 前置きが長くなりましたが、そんな瑠伽が、緑葉や歩夢と『桜送祭』（千桜一族の祭典）で出会った時は、どんな反応を見せていたのかです。 瑠伽は『世界で一番かわいそうな私たち』の舞台である1999年の時点で、千桜家とは自らの意志で距離を置いています。その後、一族に戻ったとも思えませんので、少なくとも世紀末以降は桜送祭には参加していないはずです。緑葉と歩夢は1990年生まれで、緑葉は小学五年生までイギリスで暮らしているため、瑠伽とは会っていません。桜送祭に合わせて帰国した年もあると思いますが、瑠伽の方が子どもを避けると思います。なので歩夢とも面識がある程度だと思います。 親世代、芹葉と梨緒は同世代なので、知り合いです。 緑葉の母、芹葉は千桜一族の血を信じているため（それが原因で緑葉ともよく口論になっていました）、瑠伽から避けられていたと思います。 対照的に、歩夢の母、梨緒は機転が利き、フラットな心を持った人間なので、瑠伽とも普通に喋っていたんじゃないかと思います。 千桜一族の使命を信じ込んでいるタイプからは距離を置こうとするけれど、杏のように真逆のタイプであれば邪険にはしない。むしろ、そういう人間としか上手くやれない。瑠伽はそんな風に考えていたのかもしれません。実際、杏が経営するフリースクールに転がり込んでいますし。 以上、マニアックな話でした。 いつか、もしも静鈴荘シリーズの第二部を書けたとしたら、瑠伽とはまた会えるような気がしています。