亀松太郎:質問ありがとうございます。ただ、なかなかの難問ですね。
たしかに、現在の新聞はコンテンツの流通チャネルをヤフーやLINE、Googleといった巨大プラットフォームに握られ、経営が苦しくなると同時に影響力も減少していっています。
そうであるならば、ジャーナリズムを学びたい人は「ニュース流通の新しい担い手」となったプラットフォームに就職するのが合理的であるようにも思えますが、一概にそれがベストとは言い切れません。
というのは、ヤフーやLINEやスマートニュースなどのプラットフォームは基本的に自ら取材してコンテンツを制作するのではなく、あくまでもパプリッシャーが取材して制作したコンテンツを掲載し、流通させることに徹しているというのが原則だからです。
したがって、もし実際に取材してコンテンツを制作し、広く社会に向けて発信するいう観点でのジャーナリズムを学びたいのならば、新聞やテレビの報道局や、自ら取材してコンテンツ制作をしているネットメディアや雑誌の編集部に就職したほうが良いだろうと思います。
実は、ヤフーやLINEでも一部、外部のコンテンツ制作者と連携してオリジナルの取材コンテンツを制作していますが、ごく限定的です。ですので、「パプリッシャーとしてのジャーナリズム」を学びたいのならば、パプリッシャーに入ったほうがベターと言えるでしょう。
一方で、「プラットフォームとしてのジャーナリズム」というものもあり、最近はその重要性が高まっています。たとえば、ユーザーコメント欄の健全化や虚偽ニュースの防止といった対策には、ジャーナリズム的な視点が求められます。また、そもそもどのメディアを選択して、プラットフォームにコンテンツを掲載するかという判断にも、ジャーナリズム的な発想は不可欠です。
そして、テクノロジーを駆使したウェブメディアの運営という点で、ヤフーやLINEなどのプラットフォーム企業が卓越しているのは言うまでもありません。したがって、「プラットフォームとしてのジャーナリズム」や「最先端のメディア運営』を学びたいのであれば、プラットフォームに就職するのは良い選択だと思います。
ただ、重要なポイントとして指摘したいのは、ジャーナリズムを学ぶ場はメディア企業以外にもあるのではないか、ということです。
たとえば、海外や日本の大学の一部にはジャーナリズムの理念とスキルを身につけるための大学院があります。そこで学びながら、自らメディアを立ち上げて運営しながら、ジャーナリズムを体得していくという方法もあります。
実際、僕の知り合いに、早稲田大学大学院のジャーナリズムコースで学んだ後、ネットメディアに就職して実践経験を積み、現在は大手出版社で活躍している優秀な編集者がいます。
回答が絞れていなくてすみませんが、「ジャーナリズムを学ぶ場は多様で、さまざまな場所にチャンスがある」というのが僕の答えです。