Shogo SENSUI:政治家の選出に対する一票の価値に濃淡をつけることが政策の品質に直接貢献するかは、わかりませんでした。 少子高齢化が深刻になる現代において高齢者層が政治家を選ぶ力は大きくなり、長期的な政策に対する力学が働きづらいことは巨視的な話として想像できます。しかし実際には、投票率が 100% になることは考えづらかったり、多くの場面で存在する既得権益の滞留など、複数の要因が複雑に絡み合っていることはご存知の通りかと思います。その点、一票の重み付けで解決できることは限定的かもしれません。 政策に応じた政治家の評価制度や、政治家ではなく政策を選ぶような仕組み、被選挙権の年齢や任期の上限の設定など、よりこれまでの制度で顕在化した課題や現在の社会通念に沿った政治制度の設計、特に人材流動性を確保できる仕組みが複合的に必要そうに思います。この前段として状況をするための改革を断行できる政治家を選出する必要がある、という話になってしまいそうですが。(Read more)
蒔田純:確かに、現状では高齢者の方が絶対数が多いし、投票率も高い訳ですから、政治に対する若者の影響力は小さくならざるを得ないと思います。このような現状を変え、若者の政治への影響を高めるため、世代別や年齢別、更には平均余命に応じて、選挙区を設けるべき、との議論もあります。 https://toyokeizai.net/articles/-/565531 http://takayama-online.net/pie/stage3/Japanese/d_p/dp2012/dp562/text.pdf これが実現すれば若者の影響力は高まりますし、政治家も将来を見据えた政策決定をするようになると思います。しかし、制度をつくるのは、現制度の下で当選してきている政治家ですから、彼ら/彼女らに、現制度を抜本的に変革し、自身の当選可能性を低減させる可能性を持つような新しい制度を導入するインセンティブはありません。上記の制度の実現可能性は極めて低いと言わざるを得ないと思います。 より現実的には、やはり若者の投票率を上げることではないでしょうか。政治家が自身の選挙のことを考えて政策決定を行うとすると、高齢者向けの施策が優先され、将来を見据えた若者向けのものが後回しにされるのは、ひとえに高齢者の方が絶対数が多いし、投票率も高いからであると言えます。であるならば、若者の投票率が下がれば、その傾向はさらに強まることになります。 加速する少子化の中で、確かに絶対数は高齢者の方が多いという事実があります。しかし、その差も、政治家が若者を無視しても良いと考えるほどではありません。2023年現在では、20代・30代の人口は約2600万人であるのに対して、70代以上は約2800万人であり、それほど差がある訳ではありません。60代以上としても、4300万人であり、約1.6倍にすぎません。 一方で投票率は大きな差があります。直近(2021年)の衆議院総選挙では、10代の投票率が43.2%、20代が36.5%なのに対して、60代は71.4%、70代は62.0%です。これを見ると、政治家が若者よりも高齢者を重視してしまうような状況をつくり出しているのは、主に投票率であることが分かります。 このことは、逆に言えば、若者の投票率が上がれば、政治家も若者を重視せざるを得なくなるようになることを意味します。絶対数とは異なり、投票率は当然、今からでも上げることが可能です。制度を変えるより先に、行うべきことはまだまだ多いと思います。(Read more)