結城浩:「自分では意図していない好結果が得られたケース」でいいますと、私が現在メインの仕事としている「数学ガール」シリーズの執筆がまさにそれになります。 「数学ガール」シリーズは派生したものや関連本も含めると、2007年以来これまでに二十冊を越える本を刊行することができていますし、いまだに継続しています。 でも、このような状況になることはまったく予想も意図もしていませんでした。『数学ガール』を書いたのは、21世紀の初め頃に、何となくWebページに「ミルカさん」という短い読み物を書いたのがきっかけですが、そのときには本にすることはまったく考えていませんでした。読者さんに好評だったのでどんどん書くようになったのです。 また、一冊目の本を出すときも、まさか二冊目以降が出るようになるとは思っていませんでした。ましてやこんなにたくさんの本が出るシリーズになるなんて考えもしませんでした。 内容的にも「思いがけない発見・意図しない好結果」があります。当初は「数学物語」として書き始めたのですが、シリーズとして書き続けているうちに、その中には自然と《学ぶこと》や《教えること》や《対話》といった要素が強く含まれていることに気付きました。 おもしろいのはそれを最初から意図して作ったわけではないのに、一冊目からその要素が入っていたことです。読者さんからの指摘を受けて初めて、著者である私が気付いたという状況でした。 これらの経験から私が繰り返し思うことがあります。それは「何となく行うちょっとした活動」であっても、そのときの自分なりに最善を尽くしてちゃんとやろうと考えるのは大事だということ。将来に何が大きく花開くか、まったくわからないからです。 * * * ◆数学ガールシリーズ https://www.hyuki.com/girl/ ◆ミルカさん https://www.hyuki.com/story/miruka.html ◆『数学ガールの誕生』(「数学ガール」シリーズ執筆の経緯などを詳しく話した講演集) https://birth.hyuki.net/(Read more)