一色登希彦:質問ありがとうございます 最初に　質問をくださったあなたは、漫画を描いてみようと思っている、あるいは描いているかただという理解で、お答えを考えてみてよいですね？ 質問を読むと、「導入の時点でわかりづらくなった」「コマを割る事そのものでパンク」とおっしゃってて、かつ、そういう時点での対策に有効なのではないかと僕は考えている「とりあえず漫画を片っ端から模写とここ好きをメモする」ことも「こっちじゃない気がして」とおっしゃっています だとすると、現時点でのあなたは、「自分は何が描きたいのか」「自分は何が言いたいのか」というところを、まだ自分で掴みきれていない段階なのではないか、と僕は思います そういう段階の人は、無理に描いてみよう表現してみようとするのを、ちょっといちどやめてみて、もう一度、好きなだけ、世の中に溢れている他人が創った物語・作品を浴びまくってみるとよいのではないかと思います そうすると、スゲえ作品にはスゲえ！と思うでしょうし、くだらない作品に出会ってしまったら「なんだこのクソ作品は」「これだったら自分が作ったほうがマシだ」「自分だったらこうする」といった怒りが沸き起こってきます（きてほしいです） その際の注意点としては、ツイッターだったコレとか各種SNSとかに、その不満とか衝動を安直に書き出して終わってはならない、ということです 体の中に溜めるのです 溜まってくると、そのうち、耐えきれなくなって吐き出すしかないことになります それを覚えておき、吐き出し、書き留めておきます ほとんどの場合、吐き出されたそれらを見返すと、とてもじゃないけど褒められたものではないレベルのものです でもそれが、あなたが吐き出した、あなただけの、「自分はこれが描きたい」の原型なのです 死にたくなるほど粗末なレベルなんだけど 「自分はこれが描きたい」がわかるとですね、「導入の時点でわかりづらくなった」「コマを割る事そのものでパンク」とかで悩むのは、どうでもよくなります 目的（到達目標である「自分が描きたいもの」）が明確になるので、あなたが望む望まざるに関わらず、 「わかりづらいのなら、どうやってわかりやすくするか」 「パンクするのなら、どうやってパンクしないようにするか」 と、脳が、情報処理する方向に勝手に向いて、眠っている間に、答えを、眠りから目覚める直前の夜明けあたりに導き出してくれます 漫画を描くことが目的になっちゃってると、これが、なかなか漫画を描くところに辿り着けないです いちど、描くこと、描こうとすることをやめてみて、人が創ったもの語っているものに溺れ直して、感動したり怒ったり（「この下手くそが！」「自分のほうがうまいわ！」とか含めて）してみるとどうでしょうか 漫画を描くことが、「描きたいこと」の手段になってくれると、下手だろうが上手かろうが、とにかく描いて誰かに見せないと死んでしまうので、「上手くいく」「上手くいかない」というレベルはどうでもよくなってしまうのです どれだけ恥をかいても別に恥ずかしく無くなる 自分で決めた期限でもいいし、他人から決められた期限でもいいですが、理想のレベルにたどり着くことができないで期限が迫ってきていて困ってしまったなら、それは、漫画を描いて仕事にする、あるいは漫画を描いて誰かを楽しませるということには向いていなかったと悟るべきポイントが来ているのかもしれないし、期限関係なく、生きている間は、漫画を描いてみたい、と考えるのでしたら、ここに書いたような、「描いてみる」→「ダメなら描くのをやめて受け手になってみる」→「違う！　自分ならこうする…とまた思ったら描いてみる」を繰り返すのは、それはそれで、それだけで楽しいプロセスになると思うのですがどうでしょう？ 書いておいてアレですが、あまり汎用性の高い答えになっていないかもしれない気が満々です 要は、漫画に限りませんが、描こうが読もうが（送り手であろうが受け手であろうが）実はどっちでもよくて、「楽しい」ことが1番なんじゃないか…と思ったりもします 「受け手じゃ我慢できん、描かないとダメなんじゃ！」という切実な人は、頑張ってください、心から健闘を祈ります、本当です