中国の小型辞書である『新華字典』を有効に使って漢語の文言文が理解できるようになった、とのこと、素晴らしい学習成果とお見受けします。この基礎のうえに、さらなる学習を、というわけですね。

 『新華字典』はハンディながら非常によい辞書ですが、これ一冊で万能、というわけにはゆきません。古漢語を読解するための辞書については、自分のブログに書いた記事もありますので、以下をご参照ください。私は、『辞源』(修訂版、もしくは第3版)をお勧めしています。ご参照ください。

https://xuetui.wordpress.com/2010/02/28/2395848/

 

 以下、『新華字典』に足りないことをまとめておきます。

(1)     出典や用例がない。

(2)     語の歴史的変遷についての配慮が少ない。

(3)     記述が不十分なところがある。

 

 『辞源』を使えば、これらの問題点をクリアすることができます。文言文は、上古から清朝の作品までの蓄積ですから、出典や用例を明らかにして、語ごとの変遷をたどらなくてはなりません。たとえば、「錢」の語の意味は何か、と問われれば、貨幣のことであると誰しも答えるでしょうが、『辞源』を見てみると、『詩経』においてこの語が金属製の農具の一種と用いられていること、そして、この農具が交易に用いられることがあったため、転じて、『国語』などの用例では金属貨幣を意味するようになったこと、などが理解されます。この例から、上記の(1)用例が明示されており、(2)語の歴史的展開についての配慮がなされている、そのような『辞源』の特徴が理解されましょう。

 (3)に関しては、例えば「臨」という語の動詞用法につき、『新華字典』は「到,来」と釈するばかりですが、一方の『辞源』は「日居月諸,照臨下土」(『詩経』邶風「日月」)の例を引き、「居上視下(上にある存在が下方を見おろすこと)」と的確に説明しています。古漢語には、上下の権力関係が張り巡らされていますが(日本語の敬語と同様)、『新華字典』ではそういった説明が省かれている場合などがあります。

 語の時代的変遷、出典・用例、文体の差異、などに着目して辞書を読んでゆけばよいように思います。

 文法書を、ということですが、これについては、一冊で様々な疑問に応えられるものをあまり知りません。楊伯峻氏の著作などを読んだことがありますが、常用はしていません。語を実詞と虚詞に分けるとすると、接続詞などを含む虚詞について悩むことが多いと思うので、虚詞の辞典を一冊備えておくとよいようです。私は、商務印書館の『古代漢語虚詞詞典』というのを勧めています(私は通読しました)。以下の記事をご参照ください。

https://xuetui.wordpress.com/2010/01/09/2154914/

 

2023/01/01Posted
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