未だ見つからないダークマター。そのダークマター同士がさらに相互作用するのを考えようってことですか。そんなの意味ないでしょ、と言いたくなりますよね。私なんかすぐにそう言っちゃうほうです。でもそういう理論はやはりあるみたいですよ。物理学者が暇で他にやることがないから? いやいや、ちゃんと理由があるんです。
ダークマターの存在が最初に示唆されたのは銀河の回転の速さの観測でした。ぐるぐる回って腕のような構造をつくる銀河のなかで星が動く速さを観測してみると、外側の星がやけに速く回っている。重力で引っ張られているとしたら外側ほど遅くなっているはずなのに。そうか、銀河の周りには見えてない物質がいっぱい集まっているんだ。それがダークマターというわけですね。現在では、さまざまな観測、特に重力レンズ効果の観測のおかげで、ダークマターの存在はゆるぎないものになっています。ひん曲がった形の銀河の画像をご覧になったことはありますか? 銀河からくる光が地球に届くまでに、どこか途中にある見えないダークマターの重力に曲げられてこうなってしまったんですね。ああいう写真を見ると、ダークマターの存在はもう疑いようもありません。
さて、ダークマターがあればそれで「めでたしめでたし」。そういうわけにもいかないようです。数値シミュレーションという武器を使うと、ダークマターを含んだ銀河の詳細なシミュレーションが可能です。やってみると、ある種の銀河ではダークマターの分布がやはり観測と合わないというんです。シミュレーションによると中心付近にダークマターの濃い部分ができるはず。それがやはり回転速度の観測と合わないらしいんですね。困りました。解決策はいろいろあるでしょうが、その一つがダークマターの自己相互作用。ぶつかり合うおかげで分布が変わってくるんですね。でもまあ今のところ海のものとも山のものとも、というのが現状だと思います。
ダークマター。ほんとに一体何なんでしょうね。発見されるまでは死んでも死にきれない。私はもう長生きすることに決めました。