彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:これは、まさに量子力学が誕生するきっかけとなった重大な疑問でもあるよ!
古典的には、というか現代でも概念的には、電子は原子核の周りを、軌道に沿って "回っている"
と説明されるよね。これは概念としては理解しやすい点で便利だよ。このような原子模型は、長岡半太郎によって1904年に発表された土星モデルに始まり、アーネスト・ラザフォードがα線の散乱実験によって更に発展させたよ。ラザフォードモデルは1911年に発表されたよ。ちなみに長岡より更に前にジャン・ペランが似たようなモデルを1901年に発表していたけど、これはあまり注目されなかったよ。
しかし、このような原子核の周りを電子が公転している、より正確に言えば「電荷を帯びた粒子が円運動をする」という構造は、電磁力学によれば、円運動によって電磁波の形でエネルギーを放出して段々と失速するよ。つまりこのモデルでは、速やかに電子は原子核と衝突するという、原子の安定性と矛盾するよ。
これについてニールス・ボーアは、「電子は特定の軌道しか取ることができない」「最も内側の軌道より更に内側に、電子は原子核に近づくことができない」というボーアの量子条件を1913年に唱え、電子軌道の謎に加えて、原子が特定の周波数の電磁波しか放出しないという、現代で言うスペクトル線の放出の謎を説明しようとしたよ。ただ、ボーアの量子条件はこれまでの実験結果を踏まえての仮説や、厄介な問題の棚上げに近い立ち位置で、どうしてこんな性質を持っているのか、という点は未だに謎だったよ。ボーアの量子条件で重要なのは、量子力学の根底である「物理量は離散的な値しか取らない
(連続的ではなく、とびとびの値しか取らない)」という極めて重要なことに言及しているよ。
ボーアの量子条件に基づくボーアモデルは、近代的な原子の解釈にとても近いよ。質問者さんの言う「なぜ電子は軌道が縮んで原子核に落下しないのか」という疑問を最初に説明したからだよ。ただし、これには未解決の仮定が含まれているし、このモデルでもきちんと説明できないいくつもの問題を抱えていた点で、まだ完全とは言えなかったよ。例えば、水素以外の原子は電子が複数あり、電子の取る特定の軌道は複数存在するよ。複数の軌道にはそれぞれ決まった数以上の電子が入り込むことはできない、と言うことも、1922年までにボーアが閉殻モデルとして自身のモデルを更新することで説明したよ。しかし、なんで決まった数以上の電子が軌道の中に落ち込まないのか、と言う点の謎は解決していなかったよ。本来、より高い軌道に位置する電子は、電磁波の形でエネルギーを放出して低い軌道へと電子が落ちてしまい、最終的には最も低い軌道に全ての電子が存在してしまうはずだよ。
この謎はヴォルフガング・パウリが1925年に定式化したことで説明されたよ。簡単に言えば、電子軌道には席の数が決まっており、1つの席に2つ以上の電子が収まることがないような性質を電子が持っている、というものだよ。これはパウリの排他原理と呼ばれていて、1940年以外には電子以外のフェルミ粒子全てがパウリの排他原理に従うという形で拡張されたよ。
電子がなぜ原子核の周りを半永久的に公転しているのか、という疑問は、実は古典力学から量子力学へとパラダイムシフトするための非常に重要な疑問なんだよ!