彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:私自身も眼鏡を日常的に使う側なので、視力が悪いことの悩みは分かるね~。
視力が悪くなる、特に症状の多い近視がなぜ回復しないのか、というのは、原因が複雑だから、という点が関係してくるよ。よく「近くのモノを見続けると近視になる」と言われるよね。確かに、これは因子の1つではあるよ。ただ、これが唯一、または主因である、と定められる原因は無く、複数の因子が複雑に絡み合っている、とする理解が一般的だよ。アメリカ国立衛生研究所が「読書やテレビ視聴は近視の原因にはならない」と言うくらいには、1つの原因に絞るのはムリと言えるよ。遺伝的な要因はもちろんだけど、先進国での急激な増加は環境要因の関与を示唆し、更にこれには近くのモノを見続けるだけでなく、屋外で過ごす時間が短い、暗い場所にいる、教育年齢の増加など、様々な因子が指摘されているよ。特に屋外での活動は、単にモノの距離が増大するだけでなく、十分な明るさや、日光を浴びることにより網膜を刺激する物質の分泌が関与している、という部分的な証拠が示されているよ。もちろん、栄養状態や先天的・後天的な疾病が視力に関与する場合もあるけど、これは割愛するね。
原因が複数あるので、どうして回復しないのか?と言うのに答えるのは結構難しいよ。近視の人が裸眼でぼやけて見えるのは、目の水晶体による光の屈折が、網膜より手前でしか焦点を合わせないことに原因があるよ。このような焦点距離の異常は、水晶体の屈折率異常か、眼球の長さ自体の異常のどちらか、あるいは両者が関与して起こるよ。水晶体も眼球もある程度は変形するタンパク質の塊なので、ある程度なら可逆的に変形するものの、不可逆的に変形が元に戻らなくなった状態が近視と言えるよ。ではなぜこのような変形が起こり、元に戻らなくなるのか、というのは現在でも研究中だよ。
では治療面はどうか?アメリカ国立衛生研究所は、今のところ近視を予防する特別な方法は存在せず、提案されている方法は追加の研究が必要としているよ。そして一般的な治療法は、メガネやコンタクトレンズと言った既存の矯正器具の使用を推奨しているよ。十分な効果があることに加え、強すぎるレンズである場合を除き、矯正器具それ自体は近視を進行させないことが十分に示されているからだよ。ただしコンタクトレンズは、眼球に直接レンズを貼りつけるという点で、若干衛生面にマイナスが振れているかな?
水晶体や眼球の不可逆的な変形のメカニズムが十分に解明されていないので、眼球を直接いじる手術法に懸念を抱くのは確かに分かるんだよ。もちろん、全くの疑似科学と言うわけでなく、かなりの人数がレーシックなどの手術を受けており、それなりの人たちが視力を取り戻しているので、それが絶対に危険だからやめた方がいい、と言うわけじゃないよ。ただ、こういう手術はヒトの寿命に対して考えると歴史が浅く、長期リスクが十分に検討されていない、というのは間違いないよ。特に術後のリハビリ期間が短いレーシックについては、各国の保健当局が手術前に十分なリスクについての説明を行うように注意喚起をしているよ。また、アメリカ連邦航空局は、屈折矯正手術やレーシックを受けた人が民間・軍事を問わずパイロットになることを禁止してはいないものの、同時に視力矯正手術を受けた人が欠格条項に該当するポリシーを保持していることに注意を促しているよ。これは高度な視力が求められることに加え、多数の人命がかかっているパイロットだからこそ、リスクを最小化するためにこのような規定を設けている、と考えることができるね。だからこれをもって矯正手術は危険である、とは言えないものの、メガネやコンタクトレンズと比べるとまだ十分にリスクが分かっていない、ということを踏まえた措置であると言えるよ。
将来的な視力回復手術については、もうこれは全く分からないね。ただし、根本的なメカニズムの解明が無くては手術は確立できないし、逆にメカニズムが分かってしまえば将来的に手術が行える可能性は高いと思うよ。不治の病が歴史上いくつ克服され、あるいは克服されつつあるのか、ということを考えればね。それが果たしていつになるかはわからないけど、全く不可能とは私は思わないよ。