Hayato Shimabukuro(島袋隼士):多くの方が「宇宙の始まりはビッグバン」というイメージを持っているかと思います。 どころで、ビッグバンはそもそもどういう出来事だと思いますか? 宇宙の始まりに大爆発が起きた?おそらく、そういうイメージを持っている方は多いかと思います。「宇宙の始まりにある1点で大爆発が起きた、それがビッグバンである」というイメージを持つ方も多いかと思いますが、それは違います。 まず、ビッグバンは大爆発というよりは、高温で高密度な宇宙で水素やヘリウムなどの元素合成が行われている状態の事を言います。なので、あえて、極端なことを言ってしまいますが、打ち上げ花火的な爆発のイメージよりも、「ぎゅうぎゅうに人が詰まったサウナで、おじさんたちが相撲(元素合成)をしている」というイメージです(かなり極端なイメージですよ!) また、ある1点での爆発というイメージをもたれがちですが、ビッグバンは宇宙のいたるところで起きています。のちに、ペンジャスとウィルソンビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)光子を検出することになりますが、彼らは「宇宙のいたるところからやってくるCMB光子」を検出します。これはつまり、ビッグバンがいたるところで起きていたことを示しています。 さて、ビッグバンは宇宙の始まりと言えるのでしょうか?いえ、言えません。宇宙の始まりは「インフレーション」という急激な宇宙の加速膨張だったと考えられています。宇宙が誕生しておよそ10のマイナス34乗秒というとてつもなく短い時間の間に、宇宙が急激に膨張したというシナリオです。このインフレーションの時のエネルギーが熱エネルギーに転化してビッグバンが起きたと考えられていますし、インフレーション時代に埋め込まれた密度ゆらぎの種が、のちに星や銀河を作ります。そのため、インフレーションは後の宇宙に影響を与える重要なイベントなのです。 さて、このインフレーションを観測的に検証しようというのが現代宇宙論の最先端の分野の一つです。インフレーションのときに重力波が生成されると考えられており、この重力波が先程のCMB光子に残す痕跡を検出しようとする試みがなされています。この痕跡の事をB-mode偏光といいます。現在、多くの実験でB-mode偏光の検出を目指していますが、未だに検出されていません。(Read more)