彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:この質問に答えるのは案外難しいね。というのは、どこまでを「温度」として許していいのか、というところになり、直観的に温度としてピンとくるものと、そうではないものがあるからね。 まず、炎のようにイメージされる化学反応で得られる温度は案外低いよ。達成可能な最高温度はジシアノアセチレンをオゾン中で燃焼した時で、最高温度は5700℃を超えるみたいだよ。 もちろん、これじゃ質問の答えにはならないね。なにしろこれだと太陽の表面温度をやっとこさ満たしただけ。太陽を含めた様々な恒星は、もちろん化学反応で燃焼しているのではなく、プラズマとしてこの温度が達成されているわけだね。ではこのプラズマの温度の源は何かといえば、中心部で発生する核融合反応によるものだよ。 核融合反応は化学反応と比べて数桁もエネルギーレベルが高い上に、少なくともエネルギー放出過程では温室効果ガスを発生させず、核分裂反応を使う原子力と比べて格段に安全性も高い、ということで、現在は人工的に核融合反応を持続させようという研究が進んでいて、この研究では人工的に達成可能な高温の記録がいくつも示されているよ。 というのは、原子核同士が核融合を起こすためには、剥き出しの原子核が持つプラスの電気による反発を超えるほど激しく原子核を動かさないといけないからだよ。一方で、核融合炉は太陽のような恒星の中心部と比べるとはるかに低密度なので、恒星の中心部よりもずっと高温にしないと、核融合反応が持続しないという問題があるよ。なので、太陽の中心部は1570万℃ほどなのに対し、核融合炉は最低でも1億℃の温度が必要だよ。そして、JT-60が1996年に達成した5億2000万℃が、核融合炉で達成された人工的な最高温度記録であると一般的に言われているよ。記録が古いので私も調べ直したんだけど、多分あってるはず。核融合炉は一瞬の高温を出すよりも、高温状態を維持する方がずっと大変だから、というのが理由だと思うのよね。最近の様々な核融合炉の記録を見ても最高温度よりむしろ秒数を強調していることからも、世界記録が未だに塗り替えられていない理由なんだろうね。 さて、核融合炉の5億2000万℃、これを測る温度計なんてのはもちろん存在しないので、原子核の平均運動エネルギーを温度に換算することでこのように書くことができるよ。これはエネルギーをE、ボルツマン定数をkとして T=E/kT=E/kT=E/k と計算できるよ。なので先ほどの資料でも温度について5億2000万℃とは書かれておらず、エネルギーである45keVと書かれているよ。そう考えると、他の高エネルギー現象を温度に換算する、ということもできなくもないよ。実際「人工的な最高温度」とかでギネス世界記録を引いてみたりGoogle検索してみると、割とこの方法で換算した温度が出てくるんだよね。ギネス世界記録で述べている5兆5000億℃というのは、2012年にLHCのALICEが叩き出した温度で、鉛原子核を加速して衝突した時に発生するクォーク・グルーオン・プラズマの温度だよ。とはいえこれは、かなり保守的な見積もりと考えていいね。クォーク・グルーオン・プラズマの温度が5兆5000億℃なのであって、温度として観測できない逃げたエネルギーを寄せ集めるともっと高い温度が一瞬だけ発生していたはずだからね。理想的には、LHCのALICEで起こる鉛原子核同士の衝突の瞬間を温度に換算すると、大体1300京℃に達しているはずだよ!と言っても、これは色んな条件を理想化した、実質的にはほとんど意味のない数字で、実際のところは5兆5000億℃の数字を引いた方が良いと思うんだよ。(Read more)