川原繁人:最近、心理学の分野では「人間がどのような時に幸せを感じるのか」という研究が盛んになっています。the science of happinessやthe
science of
well-beingと呼ばれています。Yale大学では、学生を対象にしたこの研究に基づくコースがあり大人気だそうです。オンラインでも受講することができます(もちろん英語ですが)。私自身も授業しましたが、非常に勉強になるコースでした。Yaleで人気になるのも納得です。このトピックに関するポッドキャストも色々でています。例えば、こちらやこちら。日本では「幸福学」と呼ばれることもあるそうですね。前野先生の御著書などが有名でしょうか。
これらの一連の研究で明らかになったことは、人間にとっての幸せの決定的な要因のひとつは「人とのつながり」であることだそうです。孤独はタバコよりも体に悪いという結果も出ているようです。ですからコロナ禍になって人に会えない状況が続いたことが、人間にとって強いストレスとして働いたことは想像に難くありません。
この「人とのつながりが大事」という話は、現代の心理学の大発見であるわけではありません。アリストテレスは「人間とは社会的動物である」としました。人間は他者とのつながりの中で幸せを感じるものだというのは古代からの知恵なのですね。人類の歴史を振りかえれば、人間はもともと集団生活を送って過ごしていたわけですから、人間が社会的動物である、というのはある意味当たり前なことなのかもしれませんね。