大谷栄治:専門的な質問ですね.大陸プレートと海洋プレートの固着域で滑りが起こり,歪が解放されるのが重要なプレート地震のメカニズムの一つです.プレートが固着域で滑るとそこに断層ができます.固着域の破壊による断層でどのようなことが起こっているのかについては,まだよくわかっていません.一般には断層帯または破砕帯ができますが,その部分は,地下の廻りからの封圧によって,大きな隙間はできないと思われますが,ミクロには,岩石の破断面にそって海水が浸み込みます.この海水は固着域が破壊した断層帯の岩石の隙間に捉えられ,また断層帯を作っている岩石と反応して蛇紋石のような含水鉱物を作ります.それらの岩石の割れ目に浸み込んだ水や,岩石と水の反応によってできた含水鉱物は,プレートの沈み込みとともに,さらに深くに沈み込んでゆきます.それらの水分は,ある深さで脱水しプレート境界に沿って上昇し,地殻の下部で観測される低周波微動の原因になっているのではないか考えられています(1~4).この低周波微動が地震の予測に使えるか否かについての検討がなされているところです.
参考文献
1.勝間田明男・鎌谷紀子, 2001, 火山から離れた地域のモホ面付近で発生している低周波地震, 日本地震学会講演予稿集, B16.
2.小原一成, 2002, 西南日本における深部低周波微動の時空間的特徴, 日本地震学会講演予稿集, A86.
3.Obara, K., 2002. Nonvolcanic deep tremor associated with subduction in
southwest Japan, Science, 296, 1679-1681.
4.Katsumata, A., and Kamaya, N., 2003. Low-frequency continuous tremor around
the Moho discontinuity away from volcanoes in the southwest Japan. Geophys. Res.
Lett., 30, 1020.