竹井邦晴:人と比べてしまうのはまさしく欲があるからだと思います。この根本は「負けたくない」「あの人より自分の方がすごい」「あの人はあんなに出来ているのになぜ自分は」といったことだと思います。さてこれらを思うことは本当に悪いことでしょうか?もちろん比較して人を下にみることは良くないことですが、自分が思って、そして比較することで自分を奮起させるのであれば非常に良いことだと思います。このような比較ができるからこそ、自分も成長できると思いますし、この成長をみんながすることで学問が成熟していくのだと思います。もし誰も比較をせずに自分だけの世界に入ってしまったら、この競争激しい科学の分野で成功することは難しいと思います。恐らく科学・工学分野で研究開発している人のほとんどが人と比較し、自分を奮起させていると思います。ただそれを口や表情に表さないだけです。
質問者は大学院生ということですので、研究に対してハングリーになって是非頑張ってください。もし自分よりもすごい人がいたら、その人を尊敬するとともに、追いつき追い越せるように頑張ってみてください。もちろん世の中には本当に凄い人もいますので追いつくどころか引き離される場合もあるかと思います。でもそれは目標を高くもって頑張っている証拠です。結果として、自分ではあまり気づきにくいですが、大きく成長していて、その時には他の誰かがあなたを目標にしているかもしれません。この連鎖が重要だと思います。
人との比較(特に科学分野での成果などについて)は悪いことではないと思いますので、自分を嫌いにならずに邁進してもらえれば明るい未来が拓けるのではないでしょうか。