蒔田純:日本社会は、どちらか言えば、相手を攻撃することよりも、紛争を回避することや平和的解決を図ることが重視される文化的な傾向があると思います。伝統的な価値観として「和」や「調和」が根付いており、複数の人・集団が平和的に共存することがもともと重視されているのだと思います。
しかし、これはあくまで文化的な傾向であって、社会制度となると話は別かもしれません。戦後、欧米、特に米国を模範とした制度を多く取り入れてきたことにより、「敵」と「味方」を区別し、「敵」に勝利して自らの利益を確保することに重きを置く制度設計となっている側面はあると思います。典型的なのは紛争解決手段であり、裁判と裁判外紛争解決(調停・仲裁・あっせん)では、もともと前者に重点が置かれ、実態としても前者が多く使われてきたと言えます。
もっとも、近年になって、裁判外紛争解決手続の促進に関する法律(2007年)が施行されるなど、制度として裁判以外の手段の充実が図られてきていることも事実です。文化的傾向と制度との間に乖離があるとすれば、現在においては、それを埋めるための制度変更が為されてきていると言えるかもしれません。