小林朋道 公立鳥取環境大学 教授 動物行動学 進化心理学:進化心理学は完全な「科学」とは言えないのでないか、という疑問を呈する人をあなた以外にも知っていますが、しっかり論理的に考えていただきたいと思います。あなたは「科学」をどように定義されているでしょう。私は、「われわれが認知する事象について、それが起こる原因を、反証可能な仮説を考え→実験し→仮説を改善・修正していく」(ことを繰り返すことによって真実に近づいていく)行為だと考えています。私が、自分の専門と言っている「進化心理学」については、実験や調査によって質的・量的に検証ができ、これまで発展してきました。現象の把握が不充分であったり、検証が不充分であったりした場合、ほかの多くの研究者も加わり、充分なものに近づけていきます。その過程は科学にはつきもので、この過程の中にある状態の研究を見られて、あなたは「科学か科学でないかの境界にあるような微妙な分野だと認識」されておられるのではないかとも推察します。そのあたりの事情は、化学や物理学に属するいろいろな分野においても同じです。 宗教と科学が異なる決定的な点は、宗教では「検証」がない、というところです。ユング心理学もフロイドの心理学も「検証」がなく、それらしいものが行われても不充分だったと思います。 地政学についてはよくわかりません。また「学問」の定義は人によって大きな幅があると思うので、学問か学問でないかについてはあまり意義ある話ができません。(Read more)