友成 琢:難しい気がします。 これまでは、たまたま世界に通用するものを生み出せていたのだと思います。 どのように状況を捉えるかだとは思いますが、たまたま過去数十年間良い時期があったと捉えるか、良い時期があって衰退してきていると捉えるかで大きく違うと思います。 おそらく、本質的には、たまたま、環境や人口構成、必要とされる技術などがマッチした結果、良いサービスや良い製品を出せた時期があったと捉えるのが良いのでしょう。 300年とか500年とかの長いスパンで見るとやはり、世界の中の小国で普通にしていたら小さく技術もない国になっていく運命なのだと思います。 当然ですが、世界の人口の数%にも満たない人口で、世界を知らない一部の特定の人たちだけの経営で、グローバルな企業をつくっていくのは、どんどん困難になっていくでしょう。 参考になれば幸いです。(Read more)
白井さゆり:日本の企業でも大企業で国際的な企業の中には、数はごくわずかですが取締役が外国人の方もいます。ただたしかに日本の社長CEOは日本で育ったり日本で教育を受けた人が多いのは事実です。欧州ではEUができたこともありさまざまな国のひとが一緒に仕事をするのはあたりまえで、国境がなく国際的に仕事をしている人が多いなと感じます。海外国籍の人が政府関係のポストにつくことも多いです。米国は世界から留学してくるひとが多いことや、多人種国家であること、さらに世界からもっとも直接投資が多い国なので沢山の外国企業がビジネスを展開しているので多様性が高いと思います。アジアでも成長が著しくダイナミックに経済が動いており各国間の交流もさんかんなので、若者やさまざまな人種の人が活躍しつつあるようにみえます。日本でも国際経済や国際的な動きなどに関心をもつ人もいますが、以前よりは減っている印象はあり内向きな印象を受けます。日本の世界GDPに占めるシェアが5%をきってどんどん低下してきていますので、もっと世界とのかかわり、理解を深めていくことも重要です。また世界のトレンドをしっかり理解して、そのトレンドをリードしていく努力をしていく必要があると思います。アジアでもどんどん新興企業が誕生し成長していますから競争は世界的に激しくなっています。(Read more)
小田部正明 (Masaaki Kotabe):とても大切な課題です。以前、日本企業が世界をリードしていた時代があったのに、最近その過去の元気さがないことに関して質問がありました。日本で教育を受けた日本人取締役の考え方、意思決定の仕方、そして人脈関係にどうしても限界があります。視野の広い(異なる)、多様な発想をもつ外国人取締役を起用することは、日本企業が「ガラパゴス」化しない為に必要な事でしょう。その時に書いた私の答えが、当に貴方の答えにもなりますので、下に記します。 1980‐90年代は技術的にもビジネスの上でも日本企業の競争力は最高峰に達していました。当時のソニーにしてもトヨタにしても世界的に知られていた時代です。NTTは日本国内の電話会社だったので世界的には知られていませんでしたが、アメリカのATTと同等に技術的には世界の先端を担っていました。携帯電話はアメリカのMotorolaが1973年に最初に完成させましたが、商品としてはその10年後の1983年に市場に紹介されています。同じ時期、日本のNTTは独自に1979年に自動車専用の携帯電話を世界で初めて開発し、1985年には肩にかける携帯電話を市場に出しました。その後、NTTは携帯電話の事業部を独立させ、NTT DoCoMoを立ち上げました。この独立したNTT DoCoMoが自由に製品開発に携われたのが、斬新的なインターネット対応の携帯電話システム(現在のスマートフォンの生い立ち)を開発できたのだと思います。それがiModeとして市場に紹介されたのが1999年のことです。 ただしNTT DoCoMoは製品技術を自社開発できたのは素晴らしいのですが、海外の企業(例えばアメリカのATT)と共同で開発したものでないので、日本国内仕様の日本独自の新製品となり、海外企業の技術とは全く互換性がなく、海外の企業に幅広く採用されることはありませんでした。所謂、日本の独自の技術は素晴らしいのだが、海外の技術と互換性がないため世界レベルの製品になれないという汎用性のない技術として「ガラパゴス」化現象が起こってしまいました。 当時、独自の技術を持たないAppleが必要な技術を入手し、2007年にiPhoneを開発、市場に出しました。御覧の通り、Appleは製品のブランディングも1999年に紹介されたNTT DoCoMoのiModeのブランディングを物真似し、Appleは製品名に小さな「i」を付け、2001年にiPodを市場に出し、続いて2007年にiPhone、2010年にiPadを次々に紹介しました。ある意味では、残念ですが「ガラパゴス」化してしまっている日本独自の技術(ブランディングも入れ)が、海外で模倣され汎用性のある製品を開発されてしまったように感じます。(Read more)
積惟美:日本人による日本人のための日本人の方法論そのものが悪いわけでは無く,その方法論が日本人・市場のニーズを満たすためだけに向いてしまうと世界市場で圧倒できる何かは作れないと思います。つまり,問題は日本人が取締役になること自体ではなく,その目線が日本市場ばかりに向いてしまうことです。 世界市場において競争優位を獲得するためには,(たとえば取締役を外国の方に全てすげ替えるなどして)他国の企業と同質化してはだめで,他国の競合他社と差別化しないといけません。そのため,日本人・日本企業の良い点を突き詰めることで,それが世界市場に受け入れられるものであれば,競争優位につながります。実際に,日本的な日本人経営者の日本企業でも世界市場でトップシェアを有している企業がいくつもあります。 また,質問で挙げられているトヨタ生産方式の思想やシステムは,おそらく,日本人が経営する日本企業でないと生み出せない生産システム(他国の企業が生み出せたとしても大分遅くなったでしょう)だと思いますが,それが世界市場におけるトヨタの競争優位になっていました。トヨタ生産方式が生み出された背景などは『トヨタ生産方式』(大野耐一)に詳しく書かれているため是非読んでみてください。この本に書かれているように,日本オリジナルの生産システムを追求することによってトヨタ生産方式は生まれました。 ただし,世界市場を見据えて世界の顧客がどのようなニーズを有しているかをしっかり把握する必要はあります。よく言われる日本企業のガラパゴス化は,中途半端に巨大な国内市場のニーズを満たすことを追求した結果生じた問題だと思います。これから少子高齢化で国内市場が縮小していくなかで,世界市場を見据えないと資本コストを超えるリターンを日本の大企業が生み出すことは難しいと思います。 重要な点は,世界市場におけるニーズをいかにして把握し,そのニーズを日本企業だからこそ生まれる強みで満たすことです。(Read more)