彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:クマバチが飛行できるのは反重力エンジンを積んでいるからだよ!……冗談はさておき、クマバチの飛行が謎とされているのは、身近な昆虫では重量の割に翅 (羽)
が小さいからという理由であり、実はクマバチに限らず昆虫全般の飛行の謎の解明に物理学者は取り組んでいたよ。
よく都市伝説として「クマバチの飛行は物理学的にあり得ない」と言われることはあるけど、この伝説の初出ははっきりしないよ。もちろん、昆虫の飛行が謎だと分かっているのは、物理学者や数学者が実際に計算をしてみて説明がつかなかったから、という背景事情は考えられるよ。ただ、あり得ないと断ずるというより、計算の仮定に何らかの誤りか理解が及んでいない要素があると、疑問に思う方が普通だから、恐らく都市伝説はどこかに脚色があるんだと思うよ。
実際のところ、もし昆虫の翅が飛行機のように固定翼だったなら、間違いなく飛べないよ。昆虫が飛べるのは翅を動かしているという部分が大きいよ。ではなぜ翅を動かすと飛べるのか。これが難しかったんだけど、1980年代ごろから理由が段々と分かってきたよ。これは空気の粘性と前縁渦という空気の動きがカギになっているんだけど、厳密にいうとこれがめっちゃむずいよ!
スゴく簡単に言うとこんな感じかな。空気や水のような流体 (気体や液体) には必ず粘性 (粘り気)
が存在するよ。これは昆虫のような小さなスケールであるほど強く働くので、同じ面積あたりで動かせる空気の量が増えるよ。だから、昆虫は小さな面積の翅で、それほど大量のエネルギーを使わなくても、十分に空気を動かすことができるよ。そして、昆虫が翅を動かして空気を動かす時に、必ず渦ができるよ。この渦のでき方がによっては、一時的に身体を持ちあげるだけの十分な揚力が働くよ。もっと複雑に言えば色々な要素があるけど、極めて単純化すれば、これらの理由によって昆虫は飛ぶことができるよ。
こうやって単純化して言えるものの、流体の粘性や渦のでき方というのは数学的に非常に取り扱いにくい問題だよ。何しろこれに密接な数学の未解決問題
(ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ)
には100万ドルの懸賞金がかかっているくらいだからね!昆虫の飛行が近年になって解かれたのは、コンピューターの発達によって厳密なシミュレーションができるようになったからという点が大きいけれども、元々数学的に取り扱いが困難で理論の構築に時間がかかったからというのも関連しているよ。
なお、この辺の細かい事情は昆虫の大きさによって変わってくるよ。クマバチのような大型の昆虫の場合、大きな面積の翅を少ない回数だけ動かすだけで十分な揚力を得られるよ。一方で小さな昆虫は空気の粘性が膨大なので、小さな面積の翅でも空気を動かすことができるよ。あまりにも小さな昆虫の場合、空気の粘性が高すぎて、まるで水中に浮いているかのような状態になってしまうので、翅というよりも綿毛のような構造になっているけど、これでもちゃんと飛べるよ。もはやこのレベルだと、泳ぐときに水を掴むという比喩があるように、空気を掴んで飛行していると言っても差支えがないくらいだね!