白井さゆり:新自由主義の定義をしていただかないと意味するところがあまりはっきりしません。マクロ経済学ではあまりこうした言葉は使わないと思います。現在は資本主義・株主市場主義よりも、ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮しながら企業価値を高めるべきとの考え方が広がりつつあります(もっとも米国では共和党を中心に企業は利益を最大化しESGなどはリターンにつながらないと考える方たちもいます)。地球温暖化や生物多様性の喪失など環境問題が深刻化しつつあり、企業が従来のようにこうした問題を配慮せずに生産経済活動をつづけることは難しくなっています。また、米中対立など地政学リスクもあり、これまでの人・もの・カネの自由化による経済効率性を重視した考え方も修正されつつあります。米国を中心に経済を安全保障とむすびつけて、安く効率的に生産できる国地域からコストはかかっても自国や信頼できる同盟国などに生産拠点を移動し分散すべきとの考え方が広がっています。