小林朋道 公立鳥取環境大学 教授 動物行動学 進化心理学:まずは、「なぜインコは人の言葉を真似るのか」からお話ししましょう。 あなたは、アヒルやカモなどの鳥類で、孵化して初めて見た、動くものを同種(あるいは親)と感じる”刷り込み”という現象を知っていますか?私が、現在、考えられている仮説の中で最も妥当性を感じる説は、「インコは、他の動物の声を”刷り込み”のような仕組みで覚えようとする習性があり、その”刷り込み”の期間がながーーく続く」というものです。集団で暮らすインコにとって、周りにいる動物は同種(インコ)で、”刷り込み”で個体の鳴き声を覚えると、その個体とより緊密な友好関係が築けるのではないかと推察されます。そのインコが人に飼われて言葉を聞かされると、覚えてしまう、というわけです。ただし、人の言葉を、文法を理解して覚えているのではなく、言葉を音として覚えている面が大きいと考えられます。 次に「インコはなぜ人の言葉を真似することができるか」についてお話ししましょう。 人が多様な音を含む言葉を話せるのは、喉にある独特の構造の声帯を空気で振動させて音を作り、また肉厚な舌を使って共鳴させることで声を出してると考えられています。いっぽう、インコも、「鳴管」と呼ばれる「声帯」に似た構造や、分厚い舌を持っており、それらを駆使して、ヒトの言葉に含まれる多彩な音を発することができるのです。 「人間でいうなら何歳くらいの知能か」という質問ですが、私は、こういった質問には困ってしまいます。種が違えば、知能の様式も異なっており(それぞれの種が進化した舞台、生息地に適応した知能様式を備えているはずです)。インコやオウムの知能は、人でいえば3歳とか5歳の幼児に相当する、と書かれたものも見たりしますが、まー、まったく意味がないとは言いませんが、私はそういう見方をしません。(Read more)