積惟美:非常に鋭い視点だと思います。中小企業の多さはその市場における企業間競争の激しさにつながり、一社あたりが獲得できる利益が少なくなります。そうなると、イノベーションに必要な研究開発や大規模な設備投資に必要な資金を確保・調達することが出来ず、日本経済に悪い影響を及ぼしていることが考えられます。また、大企業に比べて中小企業は労働生産性が低いため、日本企業の労働生産性の低さを招いていると考えられます(下図)。
図:企業規模と労働生産性
(資料;財務省「法人企業統計調査年報」)
日本に労働生産性の低い中小企業が多い理由として考えられるのは、企業の開廃業率の低さであり、収益性の低い企業が生き残ってしまう環境になるため、上記の競争を招き、(儲かりにくいので)次のイノベーションを担うベンチャー企業の開業も少なくなってしまいます(下図)。
図:開廃業率の国際比較
(資料:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b2_1_1_2.html)
日本では、企業を倒産させないことを美徳とする文化があるように思いますが、昨今問題となっている外国人技能実習生制度もそうした付加価値の低い中小企業を生きながらせるために、人材不足の中小企業に外国人を派遣し、低い賃金で働かせているという側面があるともいえる点に問題があるように思います。
そのため、誤解を恐れずにいうならば、多少の雇用の問題を短期的に引き起こすことになっても、中小企業への支援をやや制限し、付加価値を生めない中小企業の廃業を促したほうが良いように思います(もちろん、付加価値を生んでいたり、経済や文化において重要な役割を果たしている中小企業も多いので、その線引きは重要です)。長期的に見れば、これにより市場競争が緩み、次のイノベーションを担うベンチャー企業が増え、成長することにより、新しい雇用も生み出せることが想定されるように思います。ただ、雇用や企業の労働生産性に与える影響は複雑なので、難しいですけどね。