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彼の議論は多岐にわたりますが、基本的に従来あったマルクス主義の考え方、特に下部構造の仕組みを古典的な生産様式に規定されるのではなく、むしろ交換様式だ、という形で読み替え、マルクス主義哲学を大きく組み替えたというのが最大の貢献だと思います。

ただし多少身も蓋もない言い方をすれば、他の日本の同様の哲学的努力に比較して彼が異なるのは、なんといってもコロンビア大学に拠点を置きつつ、その作品を継続的に英語で出版し英米圏及びそれを超えた範囲で読めるようにしたという点が非常に大きいのではないでしょうか。

本邦でも特にマルクス主義哲学という意味で言えば廣松渉の事的世界観といった話は、非常に組織的であり翻訳されたらかなりの影響力を持っただろうことは想像できますが、本人は一度も海外に出たことはなく、現時点で多少の例外を除きそうした試み(特に英米圏)はないようです。かつてフランスの社会学者ピエール・ブルデューが晩年の廣松渉と対談した際にその部分訳を読んで自分は廣松を発見したというようなことを言ってましたが、そこで止まっている様子。

また戦後特に団塊の世代を中心に熱狂的な支持者がいた吉本隆明は、かつてミシェル・フーコーと対談し、お互いの論文を共同で出版するような話もあったようですが、吉本のペーパーをフランス語に訳した際にフーコーがその内容に納得せず、沙汰やみになったという話もあります。吉本も海外に出たことはありません。

現実の研究・評価システムは人間関係が非常に重要なので、著作が翻訳されているだけでなく、人脈作りという点においても、柄谷はかなり強い国際的ネットワーク(特に英語圏)を築き上げ、それが評価、受賞につながったと私は思います。

2023/03/16Posted
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