決定権、となると、なかなか難しいご質問です。最初のタイトルはもちろん著者が自分でつけるのですが、編集者から「それ、ダメ」「もう少し何とかならないか」とされる場合もあり、そこを通過しても、販売会議で通らないこともあるようです。「そんなタイトルじゃ売れない」とか、「もっと売るためには……」などといった意見が出されるとか。私の場合は、自分から提案する場合と、編集者と相談しあって決める場合が半々くらいだろうと思います。ちなみに、「今だから話せる」のですが、デビューしてすぐの頃、「新刊本の見本が出来てきましたよ」と言われて出版社に受け取りに行ったら、全然違うタイトルの本になっていて、あまりのことに言葉を失ったことがありました。「こんなの、自分の本じゃない」と思ったのですが、刷り上がってしまった物はどうすることも出来ず、当時の担当者は「こっちの方がいいと思ったから」と、涼しい顔をしていました。新人はそういう洗礼も受けるのかと思ったものです。また、直木賞を受賞した「凍える牙」のときも、当初、担当編集者の上司(いわゆるデスク)からダメ出しをされて、「そんなタイトルじゃダメ」「どうして牙が凍えるんだ」などと言われて、もう少しのところで「オオカミ刑事(デカ)」というタイトルに変更されるところでした。「そんなタイトルじゃ絶対に嫌だ」と涙の抗議をして、やっと「凍える牙」を通してもらったということがありました。

2021/09/12Posted
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