Yuji Miyazaki:頂いているご質問に対して直接的な答えとなるわけではありませんが(しかも前半部分だけに対する回答ですが)、以下のようなことがひとまずは言えるかと思います。
公共放送としてのNHKの必要性は、NHK自身も説明しているように、スポンサー配慮からも政府配慮へも独立した「公共の福祉」としての放送ができることに求められるでしょう。この「公共の福祉」というものが、いかにも大事そうに見えて、その必要性を説明することには困難があります。
どういうことかと言うと、米国の経済学者のJ.K.ガルブレイスは著書『ゆたかな社会』で経済的生産活動を重視する価値観が支配的になった社会において、広告宣伝による欲望惹起が比較的得意な民間部門に対して、公共部門はうまく欲望を創り出せないことを論じています。これに基因して、民間部門の生産は歓迎すべき重要な活動であると捉えられるのに対し、公共活動は「重荷」であると捉えられがちだと言います。投資で言えば、民間部門の投資である工場増設は重視されるが公共投資である教育・研究は軽視され費用削減の対象になります。他にも、自動車製造はどんどん行って販売を拡げるべきだが道路整備は最小限にするべき、電話会社は拡大するべきだが(かつての)郵便事業は重荷、などガルブレイスが挙げている例は日本でも思い当たる点が多々あるように感じます。
従って抽象的な意味での必要性の説明はNHK自身の説明でも足りているわけですが、大多数の「納得」を得るためには上記の構造的な説明の困難さを考慮に入れる必要があるでしょう。