橋本 省二:だれか教えてください。10兆円ファンドは「まやかし」ではありませんか? 借金してこしらえた元手を投資に回して、将来はそれで食っていこうってんです。堅気の者のやる仕事じゃありません。博打にはまった末、借金のカタにあるだけの着物を持ち出そうとする長兵衛さんを女房が泣きながら止める。そんな姿を思い浮かべるのは私だけでしょうか(私だけでしょうね)。借金の利息以上に稼げると思うほうがどうかしてます。個人でやったら金融リテラシーとやらで叱られるはずですが、国がやれば大丈夫なんですかね。 研究力低下の原因ははっきりしています。若手に与えるポジションをなくしたせい。昔と比べて大学の仕事は増えました。学生指導はもちろん、資金管理の適正化、IT化、産学連携、国際化、などなど。お役所は最初の数年だけ資金を出し、大学では新たに人を雇ったりして対応しますが、数年後に予算は切れて、独立法人なんだから後は自分でやってね。その代わり通常の経費は毎年削減。大学の経費に効率化の余地なんてほとんどないから人件費に手を付けるしかない。首は切れないので、定年退職した教授の後任はなし。本来は若手が着任してバリバリ研究するはずだったのに、残ったのは勢いを失ったオジサンばかり。しかも定年延長。研究力は徐々に、そして確実に衰退する。やや誇張しているかもしれませんが、これが日本中の大学で起こっていることです。 若手を雇用するときに必要なのは、長期にわたって安定した資金です。10兆円ファンドはそれを提供できるでしょうか。2、3年は出すけどその先は知りません、ということにならないか。それでは今までと同じことがさらに大規模に起こらないとも限らない。私はとても心配です。 大金の入った財布を拾った長兵衛さんは大喜び。長屋のみんなを呼んでどんちゃん騒ぎです。翌朝女房が言うには、あの財布は夢だったんだよ。我に帰った長兵衛さんは懸命に働いて3年。女房が初めて本当のことを話すと長兵衛さんは...。あれ? 何の話でしたっけ。今年もそろそろ年の瀬ですね。大晦日はやっぱり『芝浜』ですよね。それでは皆さん、よいお年を。(Read more)