僕は新卒で日本電信電話株式会社に入社しましたので、回答に適任かと思います。
大企業の良さとして個人的にしみじみ感じたのは、いち消費者として見ていたら永久に知ることがなかった世界を垣間見る事ができることです。
幹部の思いつきが組織内で何度もリフレインされ会議の場で過剰に投影され増幅し振り回される末端
責任は与えられるのにそれに見合った裁量が与えられていない中でどうにか成果の体裁を整えようとする中間管理職(その度合いが偉さによってグラデーションしている!)
一日中何をしているわけでもなくどこに発表するわけでもないパワポ資料をいじっているだけで新卒の倍以上の月給をもらう壮年平社員
昭和時代の学生運動を感じさせる労働組合が毎年お決まりのプロレスめいた春闘を行い曖昧な結果を報告する様子
異様に仕事ができる事務や契約の一般職の方々(聞いた所によるとその高い職業安定性から非常に高い倍率で採用されているらしい)
それなりの頻度で現れる謎の発明品とか特許を単身で売り込みに来る自称天才研究者or天才技術者のおじさん
誰もが善意で誠実に仕事を回しているのに社内組織間のインセンティブ設計が噛み合っていないが為に関係各者全員が不幸になる事故
複雑なルールで運用されている社内決裁手続き
これら全ては必ずしも僕が実物を見てきた物ではありません(古巣の悪口を言いたいわけではありませんし)。
ただ、こういった物の実物を見ていると例えばニュースリリースがあったり大企業が客観的におかしな行動をしている時に内部でどんな事が起きているかリアリティを持って想像することができますし、将来的にそういう組織に向けて営業するときも気をつけるべきポイントや気の利いたトークに関する勘所がわかります。
大企業というのは持続的イノベーション側の代表ですので、その会社のコアコンピタンスと比べて多くの「実は望まれていない」様々な要素が内包されています。それらは中に入ってよく観察するほど高い解像度で理解できますし、新しいビジネスアイデアの種になったりするかも知れません。
もちろん、例えば本や論文が読み放題だったり、仕事のホワイトさの割に給料が良かったりしますが、上に書いた学びと比べると想像の範疇を出ないと思います。