堀田隆一:誤用/正用とは微妙に異なるのですが,1例を挙げたいと思います.受験英語で be surprised at ... というのは習ったかと思いますが,実は be
surprised by ... というのも結構あるんですね.比率でいえば,実は半分以上の実例が by ...
を用いているようです.だとすると,受験英語で必死に覚えた be surprised at ... は何だったの?となります.
何が正しい語法かという判断は,時代によって激しく揺れるようです.というよりも,日本語でも英語でも,言語現象のほとんどが,おっしゃるとおり「言葉が誤用され続けた結果,正しい表現と結果的になる」もののようなのです.つまり,「英語ではそのような事例はありますか?」という質問に対して,答えは「あります」であり,さらには「ほとんどの言語変化はソレです」となるようなのです.
私は英語史研究者として,この1,500年くらいに生じた英語の発音,形態,文法,語彙,綴字などの変化を研究しているのですが,各々の時代において「正しい」と見なされていた言語現象が,その次の時代には「間違い」とは言わずとも「古い」とか「普通でない」というレッテルを貼られて,新しい語法に置き換えられていく過程を,日常のこととして眺めてきました.英語史研究の日常ということです.
私は研究者として,質問者の指摘するところの「言葉が誤用され続けた結果,正しい表現と結果的になることがありますが,英語ではそのような事例」を集め続けてきました.私が何をしてきたのか,その仕事を定義づけていただいた質問でした,多謝.
現代の英語からの実例としては,私のブログより「#399. 現代英語に起こっている言語変化」辺りをご覧ください.