吉戒 直彦 (Naohiko Yoshikai):これは酸素と臭素の電気陰性度の違いによって説明することになるかと思います。酸素の方が電気陰性度が高く、したがってBr-O結合間の電子をより自分の方へ引きつけようとするため、その結果としてBr(δ+)-O(δ-)と分極する、といった具合です。なお第四周期元素である臭素は、第二周期元素の酸素に比べて根本的に原子価電子の束縛が緩くなるので、分極率(電子分布の偏りやすさ)が高くなります。例えば臭素分子Br-Brはそれ自体は極性のない分子ですが、電子豊富な他の分子との相互作用によって容易にBr(δ+)-Br(δ-)と分極し、最終的には不均等開裂します。有機化学でのその典型例は、アルケンのジブロモ化反応における3員環のブロモニウムイオン中間体の形成です。