公式の「暗記」と「理解」についてはしばしば話題にのぼります。一言で言ってしまえば「場合による」だと思いますが、それでは回答になりませんね。

二次方程式の解の公式「など」とありましたが、二次方程式の解の公式に限って話をしてみます。「きちんと」暗記していれば、二次方程式の解を求めるときに便利です。そのための公式だから当然ですね。

「きちんと」暗記するというのは、単純に式の形を覚えるだけではなくて「この公式は二次方程式の解を求めるために用いるものだ」とか、「ルートの中が負になったときはどのように考えるか」とか、公式に付随する条件や取り扱い方までをちゃんと覚えるという意味です。

別の言い方をするならば、たとえば一枚の白紙を渡されて「ここに二次方程式の解の公式を書いてください。単に式だけをポンと書くのではなくて、説明の文章も書いてください」と言われたときに、二次方程式の解の公式を書くことができるかどうか。もし書くことができるなら、基本的な部分で困ることはないと思います。もしも式しか書くことができず、その式について何も言葉で説明できないならば、困ることは多々ありそうです。その公式がどんなときに使えるか、どんなふうに使えるかを分かっていなければ、暗記していても役に立てることは難しいからです。

あなたの「仕組みを理解している」というのが何を意味しているか正確にはわかりませんが、「理解する」は「理解している/理解していない」というデジタルなスイッチではなく、もっと広がりがあるものです。理解してもし尽くすということはありません。

ここで二次方程式の解の公式から離れて、一般的な「公式」の話に移ります。これも二次方程式の解の公式と同じように、式の形だけをぽこんと覚えていてもあまり役には立ちません(覚えることが悪いわけではありませんし、覚えておくことは必要ですが)。その式はどんなときに使えるのか、どんなときには(たとえ使えそうでも)使えないのか、式の結果はどのように解釈すべきか、何か例外や注意事項はないのか……のような付帯情報を知っておく必要があります。胃薬は胃の具合が悪いときに飲むということを知らなければ、胃薬を持っていても役に立たないのと同じことです。

「公式」を深く理解していれば理解しているほど、応用範囲が広くなります。実際の何かを数学的に扱おうとしたときに「これはどう取り扱っていいか、ちょっと見たところではわからないけれど、ここをこのようにすれば、ほら、あの公式が使えるようになる」などというアイディアが必要になることはよくあります。このように、自分が身につけたことを深く理解すればするほど、広い範囲で応用できるようになるのです。

暗記が悪いわけではありませんけれど、「何でもかんでも暗記すればいいのだ」という意識でいるのはよくありませんし、非常にもったいないことです。せっかく貴重な時間を掛けて学んだことが、狭い範囲にしか応用できないことになるからです。時間の都合や能力の都合で、最終的には暗記に頼るとしても、さまざまな理解を試みたり、その公式がどうして成り立つのだろうと理由を考えたりする意識をなくしてはよくないと思います。

以上、何かの参考になればうれしいです。

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2022/09/19Posted
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