福島真人:民主主義という制度は、歴史的に見てもさまざまなルーツがあり、また現状でのその実践も実に多様ですが、基本ラインというのは政治的意思決定の根拠がそれを構成する構成員の意思を反映している、という前提があり、その点だけをとれば人々が好みそうな内容(それが現実に実行可能かどうかは別として)を主張しているポピュリズムと民主主義の間に本質的な差はない、といえなくもない。実際demosはギリシャ語で人々、populusはラテン語で人々の意味ですが、両方とも人びとの指向に従って意思決定を行うわけですし、実際代議制民主主義においても、代議士はその選挙区の意向に全く反する決定は難しいわけです。
ただし現在ポピュリスムと呼ばれ批判されている傾向は、そうした選挙民の意向という面を飛び越えて、たとえ非現実的な主張でも自らの当選にとどくならそれを主張し、現実に実行する段階になって大混乱に陥るといったケースをこう呼ぶ場合が多いようです。選挙民の要求はいいとして、それを現実的な政策として具体的な政治的過程の中で「翻訳・実行」するところに代議制の味噌があると考えれば、その専門的翻訳作業を怠った主張をポピュリズムと呼ぶと考えてよいのでは。