小田部正明 (Masaaki Kotabe):確かに面白い問題です。仕事柄多数の国に住んだ経験をもとにこたえてみます。確かにヨーロッパの多くの国は大体高校に入ることまでに大学向け進学なのか技術専門職の高校に行くか決まります。選別の形は多少違いますが、基本的には中学校までの学術成績の良し悪しで決まるようです。成績の良かった学生は大学進学のための高校へと進み、成績がさほど良くなかった学生は技術専門職の高校に入ります。ただ技術専門職の高校に入ったからと言って差別されるわけではなく、手に技術をつけることに誇りを持つような教育がされているようです。つまり、一般にどのような仕事に就いても誇りを持ち、それに満足していることが多いようです。アメリカにも確かに技術専門職の高校も多少ありますが、多くは普通の大学進学を前提にした高校が普通です。アメリカはさらに自由度が高く、SATなどの全国共通試験(一年間に何度か受けられる)の結果でどのレベルの大学に入れるかが決定します。それによって大学を選び、最初の2年間は何を専門にするか事前に選択しなくても良いような形になっています。もちろん専門を後に変更することもできます。そればかりでなく、大学に直接入らず地域の短大に入って良い成績が取れれば、その州の一流州立大学に移転することもできます。ですから、将来自分がやりたいことをかなり自由に決めることができます。ただアメリカの場合は、所得の高いことが社会的な成功と見られるため、所得の格差に焦点を置くようになり、常に高い所得を得ることに関心を持ち、普通の生活に満足していない人が多いような気がします。日本は、ほとんどの場合、高校生時代の成績等でどのレベルの大学でどの専門分野だったら入れるかのような考え方をして大学を選びます。つまり、自分が将来何をしたいかどうかわからないまま、大学と専門分野を選んでしまうのが普通です。一度大学に入れば、専門分野を途中で変えることはできません。そう言う訳で、雇う企業側としても年功序列制度が薄れてきている現在でも、学生を評価するのにどのレベルの大学・専門に入れたかどうかが大切な指標になってしまう訳です。つまり個人からすればなかなか自由度の利かない社会制度であり、必ずしも個人の仕事に満足しきれていない人が多いように思えます。
この事実を世界の幸福度指数で見てみると、一般にヨーロッパ(特に北欧)の国々の人々の幸福度が一番高く、次に他のヨーロッパの国々(ドイツ、イギリス等)、そしてアメリカがその後であり、日本は更に下の方にあります(https://worldpopulationreview.com/country-rankings/happiest-countries-in-the-world参照)。
何となく国々の教育環境の違いと幸福度に相関があるように見えませんか。