鵜山太智:最近ニュースになっていた、NASAのDART実験は将来的に地球に影響を及ぼす小惑星や大きな隕石への対策を目指したものです。
この実験は小惑星の軌道を人工衛星をぶつけることで少しずらすというものを考えていまして、アルマゲドンなどの映画で見るような爆弾で何かするというものではありません。ただ地球というものは宇宙空間でちっぽけなものでして、地球から遠く離れたところで飛来する物体の軌道をほんの少しでも変えてしまうと、地球に近づく頃にはそのずれは地球サイズよりも大きくなっています。
実際は飛来してくるものがどのような運動をしているか、大きさや質量がどれくらいか、などで計算は変わってきますが、一つ例を考えてみましょう。
ある大きな隕石が地球に向かって真っ直ぐ飛んできているとします。これを地球から100万km(地球~月の約2.5倍)離れたところで人工衛星をぶつけて軌道の角度を0.5°ずらせたケースを考えてみます。0.5°と聞くと非常に小さくどれだけ効果があるのか分からないですが、かなり単純化した計算をします。ぶつけた時の距離(100万km)に角度のずれ(tan(0.5°))をかけたものが地球に到達する際のずれとみなすと、8500km以上のずれになっています。地球の半径は6000kmちょっとなので、元々地球のど真ん中に当たると推定されているものが飛来してきても、このようにある程度離れたところで少し軌道をずらすことができれば大惨事は回避できます。
ただしこれを実際に行うとなると、飛来してくる物体のモニタリングと軌道予測(天文観測)、ぶつける人工衛星の準備
(質量、操作性、ぶつけ方のシミュレーションなど)、さまざまな技術実証が必須です。DART実験のターゲットはそこまで大きな小惑星ではないですし、一つの小惑星の対処でも入念な準備が必要となっている現状を考えると、恐竜が絶滅した時のような小惑星が大量に降ってくるケースでは対処し切れないと思います。
とはいえ現在前者の地球近傍にある物体のモニタリングシステムはある程度機能しておりまして(例:
ATLAS)、地球近傍にある大きな小惑星(1km以上)のほとんどは現在モニタリングされていて今世紀に地球に飛来する可能性はないと言われています。
大谷先生のこちらの回答もご覧になってみて下さい。
https://mond.how/ja/topics/45kaht6kmy6nvxi/pno1edqexn3p15g