白石直人:趣味で数学を学ぶ「日曜数学者」の人は、自分の周りでも最近増えていると感じます。自主勉強会やゼミを休日に開いて数学を学ぶ人たちを「アマチュア数学者」と呼ぶならば、アマチュア数学者は増えていると思います。 ただ、数学で新しい発見をして論文を書くような人は、日曜数学者からはほとんど現れていないと思います。数学の場合、そもそも「既存の数学を最先端レベルまで理解する」こと自体が極めて難しいです(日曜数学者の人たちは最先端よりはだいぶ手前段階の理解が目標のことが多い)。なので、最先端レベルまで理解したうえでその先の新たな発見をするのは厳しいです。 これと比較すると、天文学における新彗星発見や生物学における新種発見は、アマチュアでも比較的やりやすいでしょう。これらは博物学的なリストを作ることに価値がある領域で、かつ全ての網羅は大学の専門家でもやりきれないので、漏れがあることも多々あります。特に彗星は新たに観測可能領域に出現した場合も少なくないので、これは先人が見つけている可能性はなく、出現後に早い者勝ちで見つけられれば新発見になります。また、大学にいる天文学や生物学の専門家は、新たな星や種の発見だけでなく、見つかっている星や種の性質を詳しく調べることの研究にも重きが置かれているため、見つけそびれた星や種が残っている余地は比較的大きいです。 逆に、見つかっている星や生物の性質を詳しく調べるタイプの研究は、アマチュアではなかなか難しい状況だと思います(生物についてはいないわけではないですが)。こうした深掘りタイプの研究は、やはり大学にいる専門家の方が進めやすいでしょう。 まとめるなら、「上に積み上げる分野(数学が典型)」はアマチュアの新発見は難しく、「横に広げていく分野(天文学や生物学の一側面)」はアマチュアの新発見の余地が大きい、ということではないかと思います。(Read more)
田口善弘@中央大学:数学者が大学で研究する理由は単純に給料がもらえて論文にアクセスできるからだと思います(僕は数学者じゃないですが)。つい最近も数学者の方が大学をやめられてかなり話題になりました。 XユーザーのFumiharu Kato 加藤文元(Bungen)さん: 「結論から言うと、私は今年の9月末で東工大を辞職します。大学を変わるのではなく、今回は大学教授自体を辞めます。これからも研究は続けますし、講演・執筆活動や現代数学を普及するための活動は継続するつもりです。教授になってしばらくは研究に集中する時間がとれず苦労しましたが(続く)」 / X (twitter.com) アマチュア数学者が増えない理由は単純に上記の条件「給料がもらえて論文にアクセスできる」という環境を手に入れるのが難しいからだと思います。天文学などは発見的な学問なので例えば一人の人が24時間観測するのと、24人の人が1時間ずつ観測することがある意味で同じ価値を持ちますが、数学の場合、一人の人が24時間勉強する作業を24人の人が1時間ずつ分担することは不可能です。このような理由で「給料がもらえて論文にアクセスできる」が実現できず、数学に集中できない人間がプロ数学者と同じ業績をあげるのは至難の業であると思います。 https://twitter.com(Read more)