鵜山太智:僕はDC、PD、海外挑戦プログラム、海外学振でお世話になっていました(今もそうです)。これまでに何度も細かいルールで納得できず学振側に直接尋ねましたが、基本「そのように決まっているから」という的を得ない回答しかいただけたことがありません。こちらの質問に対しても端的に「学振のルール」だから、とこれだけ答えてしまってはお役所的ですよね。僕の知る限りのところは共有させて頂きます。
まず根本として、学振が特別研究員を雇用しているわけではありません(今後PDに関しては雇用関係が可能となる事が先日発表されました)。学費とおっしゃっているところからDCだと想像しますが、雇用関係がないため、一般的な税金の中の枠組みとして経費になるかどうかを考えないといけないのです。そうすると学費は税金控除のために経費計上することはできません。交通費も業務ではなく通学とみなされるんだと思います。そもそも学振DCを非課税の奨学金としてくれたらいいのにと常々思ってはいたんですが、なぜこれが認められていないのか。。ここが僕自身理由を見つけられずにもやもやしています。
ただ学振を取って独立生計になると学費(半額)免除は貰える大学が多い気はします。このあたりはフルに活用してください。他に学振の中でできることとしては、研究遂行経費をフルに利用することで、支払う税金を浮かせることができます。また大学の制度、その人の研究進捗や指導教員のスタンスにも依りますが、博士号をDC期間内に出し終えて早期で修了、そのままPDとして研究を進められれば学費を浮かせられます。少し前まではこれでDCからPDに切り替えれば額面もPD扱いになっていたのですが、今はDCと同じままなのが残念なところではありますが。あとは副業や奨学金の重複などの規定も緩和されているので、こういったところから自身の研究にかける部分、生活のための部分をうまく調節しないといけないです。
最後に、学生の目線から見た生活の窮状を具体的に学術振興会へ伝える事は大事です。DCの支給額は制度の始まった時点(平成3年)から増額されていない一方で、近年のインフレや毎年のように値上がりしている各種税金・保険、また学費も値上げしていますね。更に都市部の家賃を鑑みると、場所によっては到底足りるとは僕も思っていません。ただ何もアクションを起こさずに不満だけ述べていても、届くべきところには届きません。今年度海外学振や海外長期滞在中の学振PDに対して、為替変動やインフレに対する一時支給金が出ましたが、さまざまな人がアクションを起こした事でこのような結果が得られています(議員にかけあった人たちもいます)。今まで僕が尋ねてきた時はかなり暖簾に腕押し状態だったのですが、最近博士課程の学生や若手研究者を取り巻く環境が世間的に知られるようになり、ちょっとずつ風向きが変わってきていると感じています。
研究のためならばお金は要らないという価値観は僕は全く持っていません。自身のブランディングから副業に繋がる事があるかもしれませんし、ビジネス寄りのメンターを探してみるというのも良いかもしれないですね。我慢するだけでなく、自身の生活の向上のためにできる事が無いか考えてみて、更にアクションを起こしてみると良いと思います。