三河ごーすと@作家/漫画原作者:個人競技ではなくチーム競技であることを理解することが肝要かと思います。 ライトノベルも編集者やイラストレーター等、他の人との関わりの中で出版されていくものではありますが、それでも小説本文そのものは100%自分の作品です。 よく世間で誤解されているのを見かけますが、出版社と作家はクライアントと下請けの関係ではありません。作品を世に出す決定権こそ出版社にあるものの、契約前であれば作家は、自分の作品の預け先を自らの意思で決めることができます。出版社と条件が折り合わなければ、べつに出さなければいいだけなのです。 しかしゲームシナリオの仕事は違います。クライアントからゲームのシナリオを請け負う場合、作品は自分の物ではなくクライアントの物です。自分のこだわりだけを押し通して現場全体を混乱させたり、〆切を破ったり、他人の仕事に不当なケチをつけたり、そういったことは基本的にするべきじゃありません。 イエスマンに徹するのも得策ではありません。 作品のクオリティを高めることには真剣になりつつも、目的達成のためのコミュニケーションを考えながら自分の意見を通していくことが必要になります。 又、ライトノベルの『核』は文章であり、物語です。 イラストももちろん大事な要素のひとつではありますが、ライトノベルが作品として読者に認められるためには中身が物語として面白くなければいけません。 しかし、ゲームは違います。 ゲームの面白さの『核』が物語であると我々作家は考えてしまいがちなのですが、ゲームにおいては物語はあくまでも面白さを彩るパーツの1つでしかありません。 アクション、RPG、シューティング、スポーツ、アドベンチャー等といったジャンルや、その作品が何を大事にしているのかによって、物語の重要度は大きく変わってきます。 たとえばアクションゲームで、ユーザーの期待する価値が爽快な操作性によるアクションだとしたら、シナリオの文章が長々と展開されていくのは「楽しいところまでなかなか行かない」という不満に繋がります。 良かれと思って、面白い言い回しを詰め込んだり、キャラの面白い掛け合いを入れたぞ、と思っても、それが必ずしもゲーム自体の面白さアップに貢献できるとは限らないのです。 なのでゲームシナリオの仕事をする際には、企画書の精読やプロデューサー、ディレクターへのヒアリングを通じて、なるべく早く「そのゲームが目指す、面白さの『核』」を掴むことをオススメします。 『核』を掴んだら、その面白さに奉仕するためのシナリオとはどんなものか、どんなキャラクターが最適か、考えてみてください。 ライトノベルで正解だったことが、必ずしも正解とはならない――それを意識して、真摯に取り組むのが良いかと思います。(Read more)