畠山航:2023年現在でも歯髄再生治療を行っている歯科医院は国内に複数存在します。質問文にある「市場に出回っている」という表現がどの程度を指すのかはっきりとしませんが、既に臨床応用されてはいます。大多数の歯科医院で歯髄再生治療が行われ、沢山の患者様が治療を受ける状態を指すのであれば10年後というのは難しい状況かもしれません。その理由としては現状、歯髄再生治療は保険適用外治療のため保険治療と比較すると高額な費用がかかります。日本では国民皆保険制度が存在するため歯科治療の際に保険適用の治療を選択される患者様の割合が多く、且つ歯髄再生治療が10年後に保険適用とされる可能性は低いと思われます。次に、現在の歯髄再生治療の手技として、自己不要歯から歯髄細胞を採取して培養を行っているため、歯髄再生治療を希望された時点で適応外という可能性があります(自己不要歯とは親知らずや乳歯等を指します)。歯髄再生治療を行う時点で不要歯が口腔内に確実に存在するとは言い難いため、将来の歯髄再生治療に備えて親知らずや乳歯が抜歯になる時点で、歯髄細胞を採取しておく必要があります。こういった治療法に関連した知識に対する認知度も、現状では高いとは考えられないため10年後に沢山の患者様が同治療を受ける状態になるのは難しい状況かもしれません。