矢代 航(Wataru Yashiro):このご質問、以前から気になっていたのですが、もしかしたら以下のような意味かな、と思って回答を書いてみました(私の想像が間違っていたら、スミマセン)。
ご質問いただいた方は、ある点Aから発して別の点Bに到達する光の経路は、所要時間(点Aを出て点Bに到達するまでの時間)が最短になるような経路である、という、いわゆる「フェルマーの原理」をご存じなように思われました。フェルマーの原理から、真空中での光の直進性が導かれるのもご存じと思います。その上で、もしかすると、「所要時間が最短」=「最速」と考えて、媒質中の光の速さも真空中での光の速さcに等しくなるはず、と考えられたのかもしれません。
そうだとすると、媒質中でも「所要時間が最短」、までは正しいのですが、「所要時間が最短」であることと「最速」であることは別のことで、媒質中の光の速さはcとは限らず、媒質と光の相互作用によってcよりも遅くなることもある、というのが回答かもしれません。cより遅くても、媒質が一様であれば、媒質中の二点を通る光の経路は直線になります(どんなにゆっくりでも、所要時間が最短の経路は直線になります)。
リチャード・ファインマンさんの著書「光と物質のふしぎな理論」に、「溺れている美女のところまでもっとも速く行きつく」経路の話が出てきますが(「美女」である必要はないのですが、古い本なのでお許しください)、媒質中での光の速さは、光と媒質の相互作用で決まり、その速さに対して、所要時間を最短にする経路が決まる、というのが回答です。
ちなみに、この本を読むと、光の直進性というのは、もっと奥の深い話であることが分かります。私も小学生のときに、「光って何?」と疑問に思ったのを覚えているのですが、私のまわりにはそれに答えてくれる大人がいませんでした。光の不思議なふるまいは、「量子力学」によって初めて説明されるのですが、それまで楽しみにしていてくださいね。