英単語としての Japan の語源について回答します。日本語の「日本(ひのもと)」を源泉とし、それに対応する中国語の Jihpûn (jih 「日」 + pûn 「本」)が、おそらくマラッカの貿易商を通じてマレー語 Japung を経由し、英語へ借用されたものと考えられます。英語での初出は1577年です。
英語に限らずヨーロッパの諸言語へも、アジア経由で「ジャパン」系列が借用されました。各言語での語形は、英語、オランダ語、ドイツ語、デンマーク語、スウェーデン語で Japan、フランス語、スペイン語で Japon、ポルトガル語で Japão、イタリア語で Giappone です。英語に入った詳細なルートを明らかにするのは難しいようですが、オランダ語やポルトガル語を経由して入ってきた可能性があります。
「ジャパン」系列とは別に、より早い時代に Chipangu (13世紀後半マルコポーロによる)や Cipanghu (16世紀初頭の旅行家ピガフェッタによる)などの「ジパング」系列がヨーロッパに入っていましたが、こちらは生き残らず、後に「ジャパン」系列に置き換えられ現在に至ります。
The Oxford English Dictionary によると、英語の1557年の初例は次に引用する通り、語形は Giapan となっています。
1577 R. Eden & R. Willes (title) The history of travayle in the West and East Indies, and other countreys..as Moscovia, Persia,..China in Cathayo and Giapan.
ちなみに英語で「日本」を表わす語としては Japan のほかに Nippon という語もあります。後者は英語で1670年に初出し、後には Japan の口語的な変異形として用いられるようになりました。とりわけ国家的意識を強く伴う文脈で用いられるようです。これは1603年に日本イエズス会が長崎学林で刊行した『日葡辞書』 (Vocabulario da Lingoa de Iapam) のなかで Nifon と並んで Nippon という語形が挙げられていることと関係します。
以上、英語の語源辞典などを参照して調べたことを要約し、補足を加えたものにすぎませんが、英単語 Japan の語源を紹介しました。
関連して、私の「hellog~英語史ブログ」および Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より、以下のコンテンツもご参照ください。
・ hellog 「#1774. Japan の語源」http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2014-03-06-1.html
・ hellog 「#3023. ニホンかニッポンか」http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2017-08-06-1.html
・ heldio 「#734. Japan, Japanese, Nippon の語源と英語での初出年代」 https://voicy.jp/channel/1950/540969