大学名誉教授野田:磁石と磁石が引き合ったり反発することは当然知っていますよね。これを法則としたのが磁気に関するクーロンの法則です。この法則の解釈は、磁石が磁場を作り、磁場と磁気モーメントの相互作用として力が働きます。鉄クギや鉄粉が磁石にひっつくのは、これらの鉄という物質の中の鉄の原子が磁気モーメントを持っていて、同一方向に揃っているからです。この状態を強磁性と言います。揃っている範囲を磁区と呼び、強い磁場を掛けると全て磁区の磁気モーメントの方向がそろいます。この状態を保っているのが磁石です。強磁性という状態と磁気モーメントの大きさは温度により変化します。温度を上げると磁気モーメントの大きさがゼロとなり、常磁性体と呼ばれます。温度を下げて自発的に磁気モーメントが発生してそれが同一方向に揃ったものが強磁性体です。鉄、コバルト、ニッケルが磁石にひっつくのは強磁性状態だからです。高温の常磁性状態(当然液体だと常磁性状態)では磁石にひっつきません。といっても、実は常磁性体でも強い磁場中に置かれると磁気モーメントが誘起されます。この誘起された磁気モーメントが磁場と相互作用して力が働きます。誘起された磁気モーメントは自発的に発生する磁気モーメントより遙かに小さいのでその力は小さいです。ここで述べた関係は「磁気」「磁場」を「電気(誘電)」「電場」に変えても全く同じ事が起こります。