Hidezumi Inoue:日本の国力が落ち込んでいる理由は「嫉妬心」だと思います。
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小池百合子東京都知事が子育て子育て政策で立てづけにいくつかのプランを発表しました。おそらく小池都知事は総裁選で相手にされなかったことが記憶に残っており「私の方が国よりもずっといい政策をスピーディーに実現できる」と印象付けたいのであろうと思います。
ではなぜ小池東京都知事がこのように思い切った政策を打ち出すことができるのかということになります。実は東京都は税収が好調でした。このため単純に「余力が生まれた」のです。しかしながらこの「余力」は長続きしないだろうと予測されています。コロナ禍からの回復基調が失速し海外の経済状況も悪くなることがほぼ確実だとみられているからです。
小池さんの政策自体に焦点を当てると「焼け石に水だ」とする人が多いのですが、子育て世帯を優先する姿勢に拍手を送る人が多いという傾向もあります。SNSでは小池さんは評判が良いようです。よく考えてみればこれは実に不思議な傾向です。政策に効果がなく持続可能性も疑問視されているのになぜ拍手喝采が起こるのでしょうか?
ここから次の洞察が得られます。
* 経済成長を実現するとどうしても勝ち組と負け組が出てきます。負け組を切って勝ち組を生かすか、あるいは「平等な」成長を目指すのかという選択肢が生まれます。スタンドプレイを嫌う日本の文化は「平等」を目指しますから東京のような成長点は潰される傾向にあります。
* 都民は「子育ては罰ゲームだ」という指摘に拍手喝采を送っています。つまり子育てをしたいわけではなく「親になる選択を誉めてほしい」と考えている人が多いのです。つまり社会より自己実現を優先していることになり、とても社会全体のことを考えて子供を産み育てるということにはなりそうにありません。子育て世帯が優遇されれば子供を持つことを諦めた人たちの目線はますます厳しくなるでしょう。優遇と平等の悪循環です。
前者は「みんなのことを考えて能力がある人が我慢する」という悪平等の原因になります。ところが後者は「みんな自分のことしか考えていない」ということがわかります。この二つが掛け合わされると「嫉妬のあまり周りの能力のある人を潰す」社会が生まれるのだということがわかります。能力のある人はがんばらなくなります。目立つと嫌われます。社会がそれを優遇すればするほど「妬み」も産むことになるでしょう。
小池さんがスタンドプレイができたのはそもそも女性リーダー候補として自民党の総裁選からは排除されており国政に戻れる見込みがないからです。つまりまだ排除されていない人は小池さんのようには振る舞えないのです。
政治家も有権者も結局はみな「自分ファースト」なわけですね。
政策的な問題であれば政策的に解決できるのですが、嫉妬心のようなマインドに起因する問題には解決策がありません。社会の一人ひとりが「ああこれではダメだ」として協力姿勢に転じなければ社会は成長できないのです。
=== 今回の参考読み物です ===
* 東京都、23年度予算案過去最高 8兆円超、少子化対策柱に
* 子育て給付の所得制限は「罰ゲーム」小池知事の発言が「よく言ってくれた」と話題に。国会でも児童手当の“子育て罰“で議論が
* インタビュー:賃上げの持続性に懐疑的、日本経済は来年度後半に失速=亀田前日銀局長
* 「育児支援給付、財源うらやましい」 東京都の対策に大村知事