田口善弘@中央大学:日本に関して言えば、博士号を取得してもそれにふさわしいだけの待遇を民間企業が用意できていないという要因が1つあると思います。確かに現在の日本のアカデミアの状況は悲惨なのでこれを改善しないとアカデミアで働こうという若者が増えないという問題が大きいのですが、どんな国でも博士号を取得した人の大部分は民間で活躍しています。なのでいくらアカデミアが改善しても民間での待遇がよくならないと博士号取得者全体の(平均的な)待遇が上がらないので博士課程に進もうという人増えないでしょう。博士号を取得しても、修士で卒業して就職した人が3年間企業で過ごした場合と同じ待遇しか得られないのであれば「それだったら修士で就職して3年間給料をもらった方がいいや」という学生が多く、博士課程に進む学生は増えないでしょう。理系の場合、修士卒が増えたのは、企業側が修士卒と学部卒で採用に差をつけたからで、これが起きていない文系職では依然、学部卒が大部分です。
ですが、博士号取得者を優遇するには年次で昇給していく年功序列的な賃金体系を廃して、能力別に処遇する仕組みにする必要があるので、なかなか難しいこと(日本の雇用制度全体の問題)だとは思います。