高橋賢:私の場合は論文ですが,ご質問にあるような状況はよくあります。時間と費用をかけて書いた渾身の力作があまり話題にならず,エイヤー!で書いた自分としてはあまり気に入っていないものがやたらと引用されてしまう状況です。私の場合は,自己評価が低くても他者の評価が高いものについては,なぜ他者からの評価が高かったのかを考えて,そのポイントをさらに展開した論文を書くようにしています。これは決して他者からの評価におもねるとか迎合的にウケを狙っているということではありません。他者の評価など気にしない,という人もいるかもしれませんが,視野が狭くなって自分では気がついていないその論文の「良さ」を他者が見つけてくれていると考えています。そういうことなので,他者の評価というのは自身の研究を客観的にみるために不可欠です。