川原繁人:私の感触では、これは実利的な側面が大きいのではないでしょうか。有名な例が「カルピス」で、英語でcalpisとしたところ、cow pissに聞こえてしまい「牛のおしっこなんて飲みたくない」と広まらなかったそうです。そこでcalpicoとしたところ売れ行きが伸びたとか。ただ、これも一方通行ではなく、アメリカのSaturnという会社の車が日本ではほとんど売れなかったそうです。英語でのもともとの意味は「土星」なのですが、どうしても日本語では「悪魔」という印象が拭えなかったと聞いたことがあります。商品名を考えるときに、このような要素は売り上げに直結してしまう場合があるので、そういう意味では避けるにこしたことはないのでしょう。 ブランドネームコンサルタントとお話したことがありますが、やはり、この点を第一に考えるとおっしゃっていました。音の響きなどは二義的だとおっしゃっておりました。 「帝国主義的な〜」のくだりは確かに共感できるところもあります。英語中心主義で、英語の分析ばかりが幅を利かせている現状は言語学でも存在して、日本人言語学者としては悔しい部分もあります。英語のデータがもとになって理論が構築され、日本語がそれにあてはまらない場合、「なんで日本語は英語と違うのか説明しろ」と理不尽に求められることもあります。 しかし、それでも、英語が世界の共通語の地位を確立してしまっている現状を考えると、その現状とはうまくつきあっていかなければならない、とも思っています。(Read more)