小川仁志:これは映画やドラマだけでなく、日常の様々なシーンで生じることだと思います。例えば、楽しくバーベキューをしていた最中、火を見つめていたら過去に経験した火事の記憶がよみがえり、興ざめしてしまったとか。デートの最中、過去に別の相手にふられた時のことを思い出し、急に機嫌が悪くなるとか。これらはいずれも、とてももったいないことですよね。せっかくのバーベキューもデートも楽しめなくなるのですから。自分の過去の経験と、今起こっていることは別のことであるにもかかわらず。ましてや映画やドラマであれば、まったく別世界の話です。では、いったいどうすればいいのか? つまりこれは集中力の問題なのです。今やっていることに集中すれば、記憶を含め他の情報を引っ張ってきて結びつけるということは少なくなります。国語の試験を受ける時は、たとえ嫌な記憶に関連する文章が出てきても、いちいちそんな想像をしている余裕はありませんよね? おそらくそんな関連付けはしていないと思います。それは集中しようとしているからです。だから今に集中することです。今を重視する思想には、西洋だと実存主義が、東洋だと禅などがありますね。いずれも目的は、悩むことなく生きるという点にあるのだと思います。今に集中することで、余計な情報に悩まされることがなくなるからです。私も似たような経験がありますが、そんな時は心の中で「集中、集中」とつぶやいています。試験の時も、スポーツの試合でも、多くの人がそうしていると思います。それは人生のどの場面でも同じなのです。集中は人間に備わった能力ですから、意識すれば意外とできるものです。ぜひ試してみてください。