小川仁志:人と比べてしまうというのは、人間の本能に基づく性質だといっていいと思います。そうすることで、自分を磨き、成長していくからです。あるいは、そうすることで競争を勝ち抜き、生き残ることができるとさえいえます。ただ、そのせいで劣等感や嫉妬といった負の感情を副産物として生み出してしまうことがあります。比較した結果、負けると悔しいですよね。特にプライドが高いとその悔しさも大きくなります。そして苦しむことになるのです。もちろん、その悔しさをバネにしてより成長しようとする人もいます。その場合は、人と比べることをやめる必要はありません。むしろそれを活かせばいいのです。切磋琢磨することを前向きに受け入れるということです。でも、たとえ切磋琢磨によって成長できなくても、比べることに疲れたという人は、やめることも可能です。どうすればいいのか? それはまさに切磋琢磨する競争から降りることです。我が道を行くといってもいいでしょう。だからといって、人と関わるなといっているわけではありません。喩えるなら、人とルールを共有してゲームをするのをやめて、自分のルールでゲームをするということです。ある意味で、これは達観することに似ています。それを精神の成長と呼ぶこともできるでしょう。たとえ客観的には誰かに負けていたとしても、本当に気にしないわけですから。自分のルールではそれは負けではないのです。いわば勝ち負けのない世界に自分を持っていくのです。大事なのは、逃げたと思わないことです。そう思っている限り、人のルールでゲームをしていることになります。そもそも降りることや競争をやめることをネガティブにとらえてしまう時点で、人のルールにとらわれている証拠です。比べる人生が嫌なら、まずは人生というゲームのルールを大きく書き換えることです。