綾崎隼:好きだったことが楽しめなくなった時期が自分もあります。 対象に対する気持ちが変わったわけではなく、自分が(精神的にも肉体的にも)どうしようもなく疲れてしまっている時が多かったように思います。 読書について、自分も似たような経験をしたことがあります。 子どもの頃から一番の趣味でしたが、新人賞に応募を始めたばかりの頃、落選する度に大きなショックを受けてしまい、純粋に読書を楽しめなくなりました。心が擦れているからなのですが、自分の方が面白い小説を書いているのにどうしてとか、しなくても良いあら探しをしてしまい、数ヵ月、何を読んでも駄目でした。 夢が叶った今でも、そういうことがあります。 締切に追われている時、特に初稿でゴールが見えていない時になりがちなのですが、人の本を楽しんでいる場合ではない……となってしまい、読めなくなることがあります。 大好きだったものが楽しめなくなるってつらいですよね。 いっそ作家をやめたら、もう二度と書かないと決めたら、もっと純粋に、小説も、映画も、いつでも楽しめるようになるのかなと、そんなことを考えてしまったこともありました。 もう少しだけ自分の話を。 2023年は、三つの企画を同時に進めています。 マルチタスクが得意ではないので、ずっと、いっぱいいっぱいで。 年が明けてから、月に数冊しか読めない状態が続いていました。 これでは駄目だと思い、まさに今月4月の話なのですが、毎日、必ず1冊小説を読もうと決めて、手に取っていました。 どんなに忙しくても、時間を見つけて本を開いていたんですが。 不思議なもので、毎日、読んでいるうちに、どんどん楽しくなってきて。エンジンがかかってきたというか。明日はこの本、明後日はこの本と、事前に決めて、読み進めていくうちに、やっぱり読書は本当に幸せな時間だなぁと改めて実感しました。 読書って娯楽なので。 無理して読む必要もないし、きつい思いをして続けることでもない気がします。 (自分は勉強の一貫でもあるので、そういうわけにもいかないのですが) でも、子どもの頃に好きだったということは、きっと、本質的に、体質に合う娯楽なのだと思います。 なので、しばらく忘れて。 ゆっくり休んで。 それから、ふとした時に。 あ、面白そうだなと感じられる本と出会えた時に。 たっぷり時間を取れる日に。 本を開いたら、きっと、昔のように楽しめるんじゃないかなぁと思います。(Read more)