小川仁志:「ときめき」という言葉の語源は、動悸がする、つまりドキドキするところから来ているようですね。そういえば子どもが小さいころ、ドキドキする感じを「胸の中で蝶が羽ばたいている」と表現していたのを覚えています。子どもらしい表現ですが、このときめきを念頭に置いて見直すと、なかなか秀逸な描写であるように思えてきます。実際、西洋では恋愛でドキドキすることを、お腹の中に蝶がいると表現することがあります。ときめきとは、まさにそれが突然起こることであるように思うのです。その意味では、何かが自分の性格にマッチするかどうかのセンサーという解釈も、すごくうなずけます。そこで、私なりにこの感覚を表現するならば、「思考の羽ばたき」でしょうか。ずっと続いていた思考が、急に蝶のように羽ばたきだす感じです。要素に分解すると、①急な出現、②昂り、③未知数という三つに分けられると思います。私たちがときめきを覚えた瞬間、それまで頭の中にあったものと違うものが急に現れ、気持ちが昂ります。でもまだ何が起こるかは未知数なのです。あたかも思考が突然蝶に変身し、パタパタと舞い上がったかのような感覚です。そんなドキドキだけでもワクワクだけでもない羽のパタパタが、私たちを素敵な眩暈へと誘ってくれるのではないでしょうか。