彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:概ね、質問者さんの予想通りだよ。まず、これは私の記事の宣伝だけど、実は1年ほど前に、二酸化炭素と水素を代謝することで単体の炭素と水を生成する生物が3種類見つかっているんだよね!この研究でも言及されている通り、単体の炭素は炭酸塩と同じく、生態系での炭素循環に加わらない固定された炭素だとみなされるよ。単体の炭素は燃焼させる以外は化学的にも物理的にも極めて安定した物質なので、基本的に生物によって代謝されることはないからね。また、地層に埋まってもそれは同じで、半永久的に安定しているよ。石炭やチャコールに代表されるように、植物の構造を数億年間留めているものもあるし、生物の遺骸ないし老廃物や排泄物が変質して単体の炭素になったと観られるものが、最も古いものだと38億年前のものすらあるよ!これほど長期間に渡って残り続けるのは、単体の炭素が酸化反応以外において相当に安定であることを示す1つの証拠だよ。
さて、さっきは思いっきり記事の宣伝をしたけど、あれは深海にいる古細菌の代謝を調べたら単体の炭素が生じるのを見つけた、という内容だよ。深海は調べられている場所が全体に対して極めて少ないし、古細菌はまだまだ未発見種が多い上に、発見済みの種でも生態が分かっているのはごくわずかしかいないよ。そしてもちろん、海底に森林火災のような大規模な酸化現象は期待できないよ。海底火山の噴火や、熱水噴出孔のような極めて反応性の高い物質が噴き出す現場で酸化される可能性もなくはないものの、そのような現場は広い海底の中で極めて少ないと考えられるよ。そう考えると、これまで炭酸塩の文脈でのみ考えてきた炭素固定は、単体の炭素も考慮に入れないといけないかもだし、むしろこっちの方が多い可能性すらあるよ。
そして裏を返せば、単体の炭素を代謝する生物もまた、未発見なだけでいるかもしれないよ。もちろん、エネルギー効率の面から見ればそこまで良いものじゃないけれども、かといって炭酸塩と比べれば使えておかしくないものだし、何より単体の炭素を出す生物の量次第では、逆に利用する生物がいても全然おかしくはないね。とはいえ、今はそんなのは見つかってないので、今のところは単体の炭素と言うのは生態系から切り離された固定された炭素と考えて良いと思うんだよ。