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アメリカ英語とイギリス英語、オーストラリア英語の関係は、日本で言う方言とは異なるものなのでしょうか?

 異なるものではありません,同じと考えてよいです.

 同じ言語でも地域によって発音,文法,語彙などが多かれ少なかれ異なるというのは,すべての言語に共通の現象で,その各々を(地域)方言と呼んでいます.言語というものは,ある程度の長さの歴史があり,空間的にも互いに隔たっていれば,それぞれ独自の言語変化を経て方言化していくのが常です.数百年から数千年の時間をかけて方言化の程度が甚だしくなると,お互いにまったく通じなくなり,「異なる方言」から「異なる言語」と呼ぶにふさわしいレベルになります.

 日本語は,なかなか歴史が長く,方言が多様化するのに十分な時間的スパンがありました.結果として,大雑把に分けても八丈方言,東部方言,西部方言,九州方言,北琉球方言,南琉球方言などと,互いに大きく異なる地域方言が発達してきました.

 一方,英語の場合,イギリスから世界へ拡散したのは近代以降のことで,アメリカ英語にしてもせいぜい400年,オーストラリア英語では250年程度ですので,方言化の程度はさほどではありません.その他カナダ英語,アイルランド英語なども然りです.

 ただし,英語そのものの歴史は日本語と同じくらい長いですので,世界展開する以前にも,イギリス内部においては著しい方言化が進んでいましたし,現在もイギリスでは日本語に勝るとも劣らず多様な方言が話されています.

 英語の場合は「世界語」ですので,イギリス内部にとどまらず,世界中に展開し,方言を発達させたという特別な事情があるために,日本語とは状況が異なるようにみえるかもしれません.しかし,英語も日本語も「方言事情」の観点からは本質的には同じで,異なっているわけではありません.「アメリカ英語」「オーストラリア英語」は,それぞれ英語の「アメリカ方言」「オーストラリア方言」と理解しておいて,まったくかまいません.

 参考までに筆者の hellog~英語史ブログ より こちらの記事 も合わせてご覧ください。

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堀田隆一

Scholar

 英語の歴史と歴史言語学を研究しています(プロフィールは https://bit.ly/3PnXWQ3 ).日々,慶應義塾大学文学部にて学生たちと「英語に関する素朴な疑問」について議論しつつ,著書,ブログ,Voicy ラジオ,YouTube などで情報を発信しています.毎日更新の「hellog~英語史ブログ」:http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/ , 毎日更新の「英語の語源が身につくラジオ」(heldio):https://voicy.jp/channel/1950 ,「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」(YouTube): https://bit.ly/3tbP3in,著書『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年),『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年).